スラブ打設後の不陸測定:
物流倉庫の床平滑性を“数値化”する最新3D計測ガイド
対象:ゼネコンの施工・品質・ICT担当/物流事業者の設備・保全部門
主キーワード:不陸測定/スラブ/平坦度/FF・FL/Fmin/JASS5/3D計測
AGV/AMRや高密度ラックが走る最新の物流倉庫では、床のわずかな凹凸や傾斜が 走行安定・安全・設備寿命に直結します。本コラムでは、 スラブ打設直後に床の不陸をJASS5・FF/FL・Fminに基づいて“数値化”し、 同日〜短納期でヒートマップとレポートを出すための標準ワークフローを整理します。
要点:スラブ不陸を「即日で数値化」する意味
スラブ不陸測定は、もはや「仕上げチェック」のみが目的ではありません。 AGV/AMR・シャトルラック・高密度保管を前提とした物流倉庫では、 床平滑性は運用の前提条件です。
- 打設直後に不陸を把握できれば、是正工事を翌日以降の工程に組み込みやすく、工期リスクを大幅に圧縮できます。
- 3D点群による床全面ヒートマップにより、「どこを」「どの程度」補修すべきかを直感的に共有できます。
- JASS5・FF/FL・Fminなどの指標を3Dから一括算出することで、発注者・設備メーカーとも共通言語での合意形成が可能になります。
本コラムは、施工・品質・ICT担当が「不陸測定の標準フロー」を設計する際に、 そのまま仕様書・発注条件のたたき台として使えるレベルを目指しています。
基準と指標:JASS5/FF・FL/Fminの整理
不陸を評価する指標が複数あるにもかかわらず、案件ごとにどれを採用するかが曖昧なままだと、 施工側・設備側・エンドユーザー間で期待値がずれがちです。 ここでは、代表的な指標の考え方と、3D点群での読み替え方を整理します。
JASS5(床仕上げの平坦度)と3D点群での読み替え
JASS5では、床仕上げの平坦度を3mスパンで評価するのが一般的で、 「3mにつき7mm以内」をひとつの目安とするケースが多く見られます(仕様・仕上げ厚により変動)。
- 従来は3m直定規でのスポット測定 → 「測った箇所」しか分からない。
- 3D点群で床全面を取得すれば、同様の3m基準を床全域に対して一括集計可能。
- 仕上げ材の厚さや仕様に応じて許容差を事前合意し、レポート上で明示することが重要です。
FF(Flatness)・FL(Levelness)の考え方
FF/FLは、アメリカを中心に普及している床の平滑性・水平性評価指標です。
- FF(Flatness):短波長(局所的な“波”)を評価。値が大きいほど平滑。
- FL(Levelness):長波長(全体的な傾き)を評価。値が大きいほど水平。
物流倉庫では、広いオープンフロアの走行性やラック設置性を説明する際に、 JASS5+FF/FLの組み合わせで提示すると、海外規格を意識したクライアントにも説明しやすくなります。
Fmin評価が必要になるケース(狭通路シャトル・高密度ラック)
狭通路シャトルや高密度ラックでは、台車・シャトルが決まった通路を一定方向に走行するため、 通路方向の連続プロファイルを評価するFminの考え方が有効です。
- 特定通路ごとに、走行ラインに沿った高さプロファイルを抽出。
- 急なうねりや傾きがないかを数値とグラフで確認。
- 局所研磨・補修前後でプロファイルを比較することで、「どれだけ改善したか」を定量化できます。
計測技術の比較:TLS/モバイルLiDAR/ドローン
「とりあえずレーザースキャナで」という選び方ではなく、 目的・工期・現場条件から逆算してTLS・モバイルLiDAR・ドローンなどを組み合わせることが重要です。
| 技術 | 概要 | 得意領域 | 精度レンジ* | スピード | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| TLS(地上型レーザースキャナ) | 据置型で数百万〜千万点/スキャン。屋内暗所にも強い。 | 屋内スラブ全面の高密度点群取得。 | ±1–3mm | ○(複数立位で全面網羅) | Flatness専用アプリ連携で打設当日解析も可能。 |
| モバイルLiDAR(背負/ハンディ) | オペレーターが歩行しながらスキャン。 | 広い床の即時“あたり”把握・是正箇所の洗い出し。 | ±3–8mm | 最速 | 最終検査・引渡し書類はTLSとの併用が安心。 |
| ドローン(写真測量) | 上空撮影→SfM点群を生成。 | 屋外ヤード/上屋のない床・舗装。 | ±5–20mm | ○(広範囲を一気に取得) | 屋内は基本GPS不可。屋根下は別手段が前提。 |
| ドローン(LiDAR) | レーザ点群。植生下・複雑地形に強い。 | 屋外造成地・法面・ヤードの整形状況把握。 | ±3–10mm | ○ | 屋内利用は環境制約が大きく、専門設計が必要。 |
実務の“勝ち筋”:ハイブリッド運用
- 打設〜仕上げ直後:モバイルLiDARで即時全体像 → 不具合箇所の当たりを色分けして共有。
- 検査・引渡し前:TLSで高密度点群 → JASS5・FF/FL・Fminレポートを一括出力。
- 屋外ヤード・造成地:ドローン点群で水勾配・排水性を広域にチェック。
「スピード重視のモバイルLiDAR」と「証跡・精度重視のTLS」を使い分けることで、 工期短縮と品質確保を同時に実現できます。
ワークフロー:計画〜計測〜解析〜是正〜再測定
不陸測定を標準化するには、「誰が・いつ・どの器械で・どのアウトプットを出すか」を明確にしたワークフローが不可欠です。
Step 1:事前計画(基準点・グリッド・安全計画)
- 既知点・BMの有無を確認し、必要に応じて基準点を追加設置。
- 評価指標(JASS5/FF・FL/Fmin)を事前に合意し、3mグリッドや走行ラインを計画。
- スキャン立位・歩行ルート・安全動線を整理し、打設・養生工程との干渉を確認。
Step 2:3D計測(TLS/モバイルLiDAR)
- TLS:立位間の重複率・視通を確保しながら、床全面を高密度で取得。
- モバイルLiDAR:歩行スピード・軌跡を調整し、床全体をムラなくカバー。
- 必要に応じて、周辺柱・壁・レベル基準線も取得し、後段の解析に備えます。
Step 3:点群処理・平滑性解析
- ノイズ除去・床以外(柱・機材)の除去など、床面の抽出を実施。
- 基準面(設計GL)との差分を計算し、高さ偏差マップを生成。
- JASS5相当の3mスパン、FF/FL、必要に応じてFminを算出し、統計値を整理。
Step 4:可視化・レポート作成・是正・再測定
- 床全面の凹凸をヒートマップで表示し、閾値超過部分を抽出。
- 断面図・プロファイル・集計表を組み合わせ、施工管理・設備メーカーと共有。
- 是正後に再スキャンを行い、改善前後の比較レポートを残します。
納品フォーマット(用途別)
| 用途 | 主なファイル形式 | メモ |
|---|---|---|
| 管理・設計連携 | IFC / LandXML / DXF | BIM/CIMや出来形照査との連携に。 |
| 画像・GIS連携 | GeoTIFF / PNG(等高線・ヒートマップ) | 是正範囲を視覚的に共有しやすい形式。 |
| 数量・統計 | CSV / XLSX | 3mスパン集計、最大差、平均不陸、FF/FL/Fmin値など。 |
| 原データ | LAS / LAZ / E57 | 元点群一式の引き渡しも対応可能。 |
チェックポイントとよくある落とし穴
よくある落とし穴
- 一部の通路や代表箇所だけを測定し、倉庫全体の傾向を見落とす。
- 設計時と現場で評価指標がすり替わる(JASS5なのかFF/FLなのか曖昧)。
- 基準点の管理が甘く、日をまたいだ測定でレベル差が混入する。
- 是正後に再測定を行わず、「やったつもり」で終わってしまう。
チェックポイント
- 計画段階で「どの指標・どの値で合格とするか」を関係者で合意。
- 評価指標に合わせて、3D計測の精度・密度・取得範囲を設計。
- 元点群・レポート・是正履歴をセットで保管し、次案件へのフィードバックに活用。
コスト・工期・品質へのインパクト
スラブ不陸測定のコストだけを見ると、「そこまでして測る必要があるか」という議論になりがちです。 しかし、AGV/AMR・シャトル・高密度ラックなどの設備投資と比較すれば、 不陸測定はむしろ安価なリスクヘッジといえます。
- 打設直後に不陸を把握 → 床補修を仕上げ前の工程に組み込みやすく、コストを抑えやすい。
- 設備稼働開始後に不陸が発覚 → 稼働停止・床補修・再立ち上げで、プロジェクト全体の損失が拡大。
- 3Dレポートを残しておくことで、トラブル時の原因切り分け・責任範囲の整理にも役立つ。
特にAGV/AMR導入プロジェクトでは、床条件の不確実性がシステム立ち上げリスクになります。 3D不陸測定で床条件を前倒しで“見える化”しておくことは、設備投資全体のROIを守るという意味でも重要です。
活用シーンと運用例
シーン1:物流倉庫スラブの“即日”品質判定
- 打設直後にモバイルLiDARでスキャン → 問題箇所を色分けしたヒートマップで共有。
- 夜間〜翌早朝にTLSで確定検査 → JASS5・FF/FL・Fminレポートを発注者へ提出。
- AGV走行試験のログと組み合わせ、数値と体感の両面からGo/No-Go判定を行う。
シーン2:狭通路シャトル・高密度ラック
- ラック通路ごとに走行ラインを定義し、Fmin評価を実施。
- 局所研磨や薄塗り補修の前後でプロファイルを比較し、改善効果を定量化。
- ラックメーカー・AGVメーカーと共通のレポートを見ながら、責任分界点を明確化。

不陸測定サービス資料・関連ガイド
不陸測定の仕様・精度・レポート形式を社内で検討する際に使える、 不陸測定サービス資料や関連コーナーストーン記事もご用意しています。
不陸測定サービス資料|計測手順・精度・レポート見本をまとめてダウンロード
JASS5/FF・FL/Fminへの対応、測定から是正・再測定までの運用、納品フォーマットの詳細を1冊にまとめた資料です。 発注仕様書・社内標準のたたき台としてご活用ください。
関連ガイド・内部リンク
不陸測定だけでなく、土量・点群・配管3Dなどを組み合わせて現場DXを進めたい方は、 以下のコーナーストーン記事もあわせてご覧ください。
FAQ:精度・タイミング・指標・納品形式
Q1. 打設直後でも測定できますか?
A. 可能です。表面硬化の状態・反射条件に応じてTLS/モバイルLiDARの機種と条件を選定し、 同日中にヒートマップまで出力することもできます。 現場の安全・養生状況とあわせてスケジュールを設計します。
Q2. どの程度の精度が出ますか?
A. 屋内のTLS計測では±1–3mmをひとつの目安としています(あくまで条件依存です)。 重複スキャンによる再現性テストや、基準点の検証などQCフローを標準で組み込んでいます。
Q3. 指標はJASS5だけで十分でしょうか?
A. 倉庫の用途によります。オープンフロアが中心であればJASS5+FF/FLで十分な場合が多いですが、 狭通路シャトルや高密度ラックがある場合は、通路方向の連続プロファイルを評価するFminも併用するのが安全です。
著者情報・更新情報
東海エアサービス|不陸・出来形3D計測チーム
建設DX/ICT施工に強いドローン・3D計測会社。名古屋本社・全国対応。 ドローン/TLS(地上型レーザースキャナ)/モバイルLiDARを組み合わせ、 土量・不陸・出来形の「可視化と帳票化」をワンストップで支援します。
最終更新:
カテゴリ:不陸測定/スラブ/物流倉庫/3D計測
不陸測定の標準化・仕様書づくりから相談したい方へ
「どの指標を採用すべきか」「精度とコストのバランスをどう取るか」「既存仕様書を3D計測前提に書き換えたい」など、 不陸測定の設計段階からのご相談も歓迎しています。
東海エアサービスは、スラブ不陸測定だけでなく、土量・出来形・点群運用を含めた 現場全体の3Dデータパイプラインを設計・実行までサポートします。
東海エアサービス株式会社(Tokaiair Service Co., Ltd.)
建設・インフラ分野の3次元計測・解析に特化した技術サービスを提供。 ドローン、地上型レーザースキャナー、モバイルLiDAR、各種解析ソフトウェアを駆使し、 スラブ不陸測定・土量・出来形・点群運用を通じて、BIM/CIM推進と現場DXを支援します。


