この記事で分かること:O&M担当者が点検品質を確保するために

この記事は、太陽光発電所の設備保全・運営管理に携わる技術担当者やプロマネの方向けに、点検の質を落とさずにコストを最適化するための具体的な視点を提供します。

  • 安価な点検に潜む発電ロス拡大のリスクの本質。
  • 専門業者を選定する際に、必ず確認すべき7つのチェックリスト
  • ドローンサーマル点検地上精密点検を連携させ、最短で異常箇所を特定・修繕につなげるワークフロー
  • 面積・立地別点検費用相場と、コストを抑えつつ品質を確保するための交渉ポイント

「点検コストを下げろ」という圧力と、「発電ロスを絶対に防げ」という要求の間で板挟みになっている担当者様の悩みを解決する一助となれば幸いです。


課題:点検の安価化が招く発電所運営の深刻なリスク

点検の安価化が進む背景と潜むリスク

FIT制度開始から年月が経過し、発電所の点検市場は成熟期に入っています。その結果、点検単価の低下競争が激化していますが、単にコストだけを追求した点検には大きなリスクが伴います。

  • 異常見落としリスク:ドローンの飛行速度や解像度を落とすことで、バイパスダイオードの不具合セルクラックなどの重大な異常を見逃す。
  • レポートの不備:異常箇所を特定するだけで、その後の修繕計画に必要な詳細情報(座標、熱源推定)が不足している。
  • 修繕の手戻り:レポートの座標情報が不正確なため、現地で異常箇所を再探索するリードタイムが発生し、修繕が遅延する。

サーマル点検(赤外線点検)の「質」を見極める視点

サーマル点検は異常箇所を効率よく特定する強力なツールですが、計測条件や解析レベルによって結果が大きく異なります。技術担当者は、ただ「ドローンでサーマル点検を実施した」という事実だけでなく、以下の点を確認する必要があります。

  • 計測時間帯の適正:太陽の日射量が安定し、温度差が明確になる特定の時間帯に計測されているか。
  • ドローンのセンサー精度:計測対象の温度分解能(NETD)が十分な水準にあるか。
  • 解析者の専門性:熱画像からホットスポットPID現象モジュール汚れなどを正確に判別できるO&M専門の解析者が担当しているか。

チェックリスト:太陽光パネル点検で失敗しない業者選びの7大基準

点検業者を選定する際に、料金表だけで判断せず、必ず以下の7つの項目についてヒアリングと資料請求を行いましょう。特に「データ連携」と「修繕体制」は、点検後の実利に直結します。

1. O&M業務への理解度と経験

単なる空撮業者ではなく、発電所のO&Mに関する専門知識を持っているか。過去に担当した発電所の規模(メガソーラー、高圧など)や対応年数を確認します。

2. ドローンとセンサーの仕様

使用する赤外線カメラの解像度NETD(温度分解能)可視カメラの解像度を開示できるか。安価なドローンで低品質な画像しか得られないケースを避けます。

3. レポートの納品形式と詳細度

異常モジュールの緯度経度情報ストリング単位の特定情報劣化状況の分類(軽度/中度/重度)が明確に記載されているか。修繕依頼時にそのまま使える形式であることが望まれます。

4. データ管理と連携体制

点検データをGIS(地理情報システム)で管理し、必要に応じて既存の監視システムやSCADAと連携できるか。次回の点検時にも同じエリアを追跡できる体制が重要です。

5. 地上精密点検への対応能力

ドローン点検で異常が検出された後の地上でのEL/IV曲線測定など、精密な原因特定に対応できる体制があるか。ワンストップで対応できるとリードタイムが短縮します。

6. 天候リスクへの対応と実績

天候不良による点検中止や延期の際の対応実績代替日程調整のスピード。また、日射量が少ない曇りの日でも、適切な解析で異常を検出できる技術があるかを確認しましょう。

7. 安全管理体制と保険

無人航空機飛行許可安全運航管理者の配置対人・対物賠償保険への加入状況など、現場での事故リスクに備えた体制が整っているかをチェックします。


ワークフロー:点検品質を最大化するドローン・地上連携の最適手順

点検を「実施すること」が目的ではなく、「発電ロスを最小限に抑え、修繕を迅速に行うこと」が真の目的です。そのためには、ドローン空撮(広範囲・高速)地上点検(精密・原因特定)の連携が不可欠です。専門性の高い点検業者は、以下の最適化されたワークフローを提案します。

ステップ1:高効率なドローンサーマル点検による異常モジュールの全数検出

広大な敷地を高解像度の赤外線カメラを搭載したドローンで迅速に空撮します。この工程で、ストリングレベルでのホットスポット断線バイパスダイオード不良などの可能性があるモジュールを全数洗い出します。この時のデータには、高精度な位置情報(緯度経度・モジュールID)が紐づいていることが必須です。

ステップ2:専門の解析者による異常分類と優先順位付け

取得したサーマル画像をO&M経験豊富な解析者が分析し、「緊急度の高いホットスポット」「PIDの可能性」「軽度の汚れ」などに分類します。この分類に基づき、発電ロスへの影響度を考慮した修繕の優先順位を設定し、地上点検が必要な箇所を厳選します。

ステップ3:地上精密点検による異常の原因特定と検証

ステップ2で抽出された高優先度の異常箇所に対し、地上で以下の精密検査を実施します。ドローンでは特定できない、電気的な故障物理的な損傷かを見極めます。

  • IV曲線測定:モジュールの出力性能を測定し、内部抵抗や劣化度合を定量的に把握。
  • EL検査(電界発光検査):モジュールに通電し、微細なセルクラックはんだ不良を検出。
  • 目視点検:鳥糞、パネルの破損、接続箱の異常などを確認。

ステップ4:修繕計画へのデータ連携と効果検証

ドローンデータと地上データを統合した統一レポートを作成し、O&M担当者やEPC事業者に共有します。このレポートは、修繕業者がそのまま現地で使える情報を含んでおり、修繕後の発電量回復の効果検証にも活用されます。


費用相場:ドローン・地上点検のコスト比較と最適化戦略

点検費用は、発電所の規模(MW)立地(平地/傾斜地/屋根)点検項目によって大きく変動します。ここでは、一般的な相場観と、コストパフォーマンスを最大化する戦略を解説します。

ドローンサーマル点検の一般的な費用相場

ドローンによる広範囲のサーマル点検は、地上点検に比べて圧倒的に安価かつ高速です。費用は1MWあたりで算出されることが多く、解析レポート作成費用が含まれます。

発電所規模点検頻度費用相場(税込)※1MWあたり備考
高圧(500kW〜1MW未満)年1回約15万円〜30万円立地条件や移動距離で変動大
特別高圧(1MW〜10MW)年1回約10万円〜25万円規模が大きいほど単価が下がる
特大(10MW以上)年1回約8万円〜20万円解析自動化ツールの導入でさらに低減の可能性

※上記はあくまで目安であり、使用するドローンの機材、解析者の技術レベル、納品レポートの細かさによって大きく変動します。

コストを抑えつつ品質を確保する最適化戦略

点検費用を削減する最良の方法は、「点検頻度を下げること」ではなく、「ドローン点検で全数異常検出し、地上精密点検は異常箇所のみに限定すること」です。これにより、地上での作業時間とコストを大幅に削減できます。

  • 統合契約:ドローン点検と地上精密点検、さらには修繕計画まで一括で依頼することで、トータルコストの交渉余地が生まれる。
  • 定期契約:年次または複数年契約を結ぶことで、単発での依頼よりも単価が下がることが多い。
  • 品質の定量化:「異常モジュール特定率99%以上」など、具体的な品質指標を契約に盛り込むことで、安価な点検による手抜きを防ぐ。

活用事例:専門点検による発電ロス改善とO&Mの効率化

事例1:山間部のメガソーラー(15MW)の出力改善プロジェクト

課題:稼働後5年が経過し、発電ロスが年々増加傾向にあったが、従来の目視点検では原因を特定しきれていなかった。

対応:ドローンサーマル点検により、全体の約5%のモジュール潜在的なホットスポット(主にバイパスダイオード不良)を発見。その中でも特に熱を持つ0.5%のモジュールを地上精密点検で検証し、優先的に交換を指示。

結果:交換後、年間発電量が1.8%向上。点検・修繕費用を約1年半で回収し、O&M担当者の修繕判断の根拠を確立。

事例2:沿岸部の高圧発電所(900kW)の塩害・PIDリスク判定

課題:海沿いに位置するため塩害リスクが高く、どのモジュールが劣化しているか、PID現象が発生しているかを見極める必要があった。

対応:サーマル点検に加え、EL検査を抜き取りで実施し、PID(Potential Induced Degradation)現象によると思われる出力低下モジュールを特定。報告書には塩害対策の推奨事項も含む。

結果:PIDリスクの高いエリアを特定し、予防的な処置(直流昇圧器の設置など)を計画。大規模な故障が発生する前のリスクヘッジに成功し、長期安定稼働の見通しを確保。

事例3:屋根置き型(500kW)の不均一発電の原因究明

課題:特定の時間帯にパワーコンディショナの出力が不安定になる現象が発生。屋根が複雑な形状のため、地上点検が困難だった。

対応:ドローンによる高精度なサーマル点検と、影の影響を考慮した解析を実施。屋根の突起物によるわずかな影が、特定のストリングに負荷を集中させていることを特定。また、コネクタ部の接触不良によるホットスポットも発見。

結果:影対策コネクタ交換を最小限の範囲で実施。ピンポイントでの修繕により、工期を半減させ、出力の安定化を実現。


FAQ:現場の技術担当者からよくある質問

Q1. 点検データは、どの程度の期間保存してもらえるのが一般的ですか?

A1. 専門性の高い業者であれば、通常5年〜10年間のデータ保存を標準サービスとして提供しています。発電所の経年劣化を追跡し、次年度以降の点検計画を最適化するためには、過去データとの比較が不可欠です。契約時にデータ管理体制アクセス権について必ず確認しましょう。

Q2. ドローン点検時に発電を停止する必要はありますか?

A2. ドローンサーマル点検(赤外線)は、パネルが発電して温度差が生じている状態を計測するため、原則として稼働中に実施します。ただし、EL検査IV曲線測定などの地上精密点検は、安全確保と正確な測定のために、該当モジュールやストリングを一時的に停止して行う必要があります。この停止時間が短く済むよう、ドローンデータに基づくピンポイントな地上点検計画が重要です。

Q3. 台風や地震などの災害後の点検で、特に注意すべき点は何ですか?

A3. 災害後の点検は、通常の年次点検とは異なり、構造物(架台、基礎)の健全性物理的損傷(モジュールの飛散、破損、浸水)の確認が最優先されます。ドローンによる可視光画像で全体の破損状況を素早く把握し、その上で電気系統(接続箱、PCS)の点検を地上で行う連携が不可欠です。また、保険申請用の客観的なデータ(座標付き写真・動画)の作成能力も、業者選定の重要な要素となります。



点検計画、修繕計画、全てご相談ください

点検費用は変動的で、お客様の発電所固有の状況(規模、立地、抱える課題)によって最適解が異なります。当社の専門家が、要件未確定の状態でも、現状の点検レポートの評価最適な点検計画の前提づくりから並走いたします。まずは一度、お気軽にご相談ください。

東海エアサービス株式会社(TOKAI AIR SERVICE Co., Ltd.)

当社は、ドローン技術、レーザースキャナ、およびGIS・BIM技術をコアに、建設・土木・エネルギー分野のDXを推進しています。単なる計測データの提供に留まらず、お客様の事業課題解決に直結する解析とコンサルティングを提供します。