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車両制限令と積載の最適点|合法・安全・コスト最小の境界線
Compliance × Cost

車両制限令と積載の最適点
—— 合法・安全・コスト最小の境界線

“ちょっとだけ多く”は、だいたい多すぎ。総重量・軸重・寸法・経路規制を式でつなぎ、越えない最大を科学的に決める。

Quick

まずは最短:5入力で“越えない最大”

  1. 車両の車両重量(空車)と軸配置
  2. ボディの実効容積 C(m³/台)
  3. 運搬材の見かけ湿潤密度 ρhaul(t/m³)
  4. 法定上限(総重量・各軸重・寸法)と経路の規制
  5. 安全マージン(%)と丸め(ceil)ルール

これで積載量(t, m³)、ダンプ台数、運搬コストの安全側最大が出ます。詳細は下の「積載の最適点」へ。

※本記事は実務整理。最終判断は最新の法令・通行許可・道路管理者の指示に従ってください。

Framework

法規フレーム:チェック観点

重量系

  • 総重量(GVW)上限
  • 各軸重上限(スプレッド・群軸を含む)
  • 荷の偏載・重心位置(輪荷重バランス)

寸法系

  • 車幅・車高・全長、積載物高さ前後突出
  • 飛散・脱落防止(シート・アオリ高さ運用)

経路・許可

  • 通行経路の道路構造規格による重さ制限
  • 橋梁・トンネルの個別制限・時間帯規制
  • 特殊車両通行許可の要否(超過時)

運用ルール

  • 積込・計量・記録(伝票・写真・テレマティクス)
  • 雨天時の含水上振れ対応(即時の再計算)
  • 教育:「無理の否定」をルール化
Formulas

積載の最適点:数式と手順

① 制約セットをつくる

荷の体積 v と質量 m を決める変数として、次の3つの上限を用意。

  • 重量上限m ≤ (GVW上限 − 車両空車重量)
  • 軸重上限m × β_i ≤ AxleLimit_i(βは荷の軸配分係数)
  • 容積上限v ≤ C_eff(実効容積。山積不可なら平積容積)

βは車型・荷姿で変化。経験値がない場合は安全側に。

② 体積と質量をつなぐ

運搬時の見かけ湿潤密度 ρhaul を使って、m = ρhaul × v

  • 密度の置き方ρhaul = ρd × (1 + w)(wは小数)
  • 雨期は w に +5〜10%pt の安全側オフセット

③ 可行領域の交点を選ぶ

次の中で最も厳しい(小さい)上限が「積める最大」。

  1. v₁ = (GVW上限 − 車両重量) / ρhaul
  2. v₂ = min_i ( AxleLimit_i / (ρhaul × β_i) )
  3. v₃ = C_eff

最適体積: v* = min(v₁, v₂, v₃) × (1 − マージン)(例:マージン=0.05)

最適質量: m* = ρhaul × v*

④ 台数・コストへ接続

  • 一運搬あたりの実効積載量v*
  • 必要台数:ceil( V_total / v* )
  • 運搬費(台×距離単価型):台数 × (2D) × U
  • 処分費:V_total × U_disp
Routes

経路規制・時間帯をどう織り込む

経路の基本

  • 最短距離ではなく重量車の実走を採用
  • 橋梁・区間の個別制限を事前に洗い出し
  • 搬出入時間の規制(学校・住宅地・夜間)

コストへの影響

  • 時間帯回避→走行距離↑ or 高速使用→費用増
  • 規制により車型変更→C_eff・β・単価が再計算
  • 許可取得のリードタイムは工程クリティカル

特殊車両通行許可が必要な場合は、仕様・経路・重量条件に即した申請が前提です。

Examples

数値シナリオ(例示

前提: C_eff=6.0 m³、ρhaul=1.85 t/m³、車両重量=12.0 t、GVW上限=25.0 t、軸配分係数β={前:0.45, 後:0.55}、各軸上限={前:8.0 t, 後:13.0 t}、マージン=5%。

  • 重量上限→ v₁ = (25−12)/1.85 ≈ 7.03 m³
  • 軸重上限→ 前軸:8/(1.85×0.45)=9.62、後軸:13/(1.85×0.55)=12.78v₂=9.62
  • 容積上限→ v₃ = 6.0
  • 最適→ v* = min(7.03, 9.62, 6.0) × 0.95 = 5.70 m³
  • 質量→ m* = 1.85 × 5.70 ≈ 10.55 t

同じトラックでも、制約は容積が支配。山積不可・シート前提ならv*はさらに小さくなる。雨期でρ↑ならv₁が縮み、重量制約が支配に切替わることも。

総量 V_total=2,400 m³、D=15 km、U=1,000 円/台・km、U_disp=2,000 円/m³ の例:

  • 台数=ceil(2400 / 5.70) = 422 台
  • 運搬費=422 × 30 × 1,000 = 12,660,000 円
  • 処分費=2,400 × 2,000 = 4,800,000 円
  • 総コスト(付帯除く)=17,460,000 円

数値は試算例。実際は法定上限・許可・地域相場・材の性状で変わります。

Pitfalls

違反を誘発するパターン

ありがち

  • 名目容積で積む(実効容積・シート分を未考慮)
  • ρhaulを乾季の値で固定(雨期で重量超過)
  • 荷の偏在(βの想定を外し前軸超過)
  • 経路の橋梁制限を未確認(当日う回→距離・費用↑)

回避策

  • 前提表を見積書へ添付(C_eff, ρhaul, β, 上限値)
  • 含水の上振れアラート(雨天時は即再計算)
  • 積込ガイドライン(平積・均し・写真記録)
  • ルートの事前承認と代替ルート準備
Template

コピペ用:前提表(法規×積載×コスト)

項目値/設定備考
車両重量(空車)12.0 t車検証
軸配置・上限前8.0/後13.0 t例示。最新基準を確認
総重量(GVW)上限25.0 t例示。経路制限に従う
実効容積 C_eff6.0 m³平積・シート前提
見かけ湿潤密度 ρhaul1.85 t/m³雨期は+5〜10%pt
軸配分係数 β{前0.45, 後0.55}車型・荷姿で設定
経路・時間帯重量車ルート/昼間搬出橋梁制限を確認
安全マージン5%荷姿変動を吸収
単価U=1,000 円/台・km例示
距離D=15 km(片道)往復=2D
処分単価Udisp=2,000 円/m³例示
算定結果v*=5.70 m³, m*=10.55 t容積制約が支配
ダンプ台数ceil(V_total/v*)V_totalは総量

この表を見積書に添付すると、法規と安全の論点が“先に”解決します。

“越えない最大”で、台数とコストを最小化

実測・密度・容積・経路・法規を束ねて、根拠ある運搬計画を作ります。

FAQ

よくある質問

Q. 数字(上限値)はこの記事の値を使って良い?

A. ここでの数値は例示です。実運用は最新の法令・通行許可・道路管理者の個別制限に従ってください。

Q. 山積はどこまでOK?

A. 荷姿・飛散防止・視界確保を満たすことが大前提。社内ルールで平積基準を原則にし、例外は承認制が安全です。

Q. 雨で重くなると何が変わる?

A. ρhaul↑で重量制約が支配に切替。その場で再計算し、積載量を下げます(マージンで吸収できる幅を事前設定)。

Q. 特殊車両許可を前提に積んでも良い?

A. ルート・期間・台数・重量条件を満たした許可取得が前提。許可コスト・迂回・待機を見積の付帯に明示してください。

監修・執筆

東海エアサービス株式会社(全省庁統一資格:役務の提供等/全国有効)。ドローン測量・点群解析・BIM/CIM・施工ICTの実務支援。

更新情報

初版:2025-10-12/最終更新:2025-10-12

※本記事は一般的な整理・数式化です。実運用は最新の法令・通行許可・道路管理者の指示・社内基準に従ってください。

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