この記事で分かること:実務担当者が押さえるべき物量管理のポイント

本記事は、砕石場・残土処理場の管理者や、ゼネコンの土量管理担当、産廃中間処理業者の技術担当の方々が、 現場の在庫管理を「感覚値」から「データに裏付けされた数値管理」にアップデートすることを目的に構成しています。

  • TS測量や簡易計測と比較したドローン測量の精度・工数・安全性の違い
  • 月次・年次棚卸しを短時間・少人数で回すための計画立案の考え方
  • 点群データから行政提出にも使える体積計算・測量図面を作成するプロセス。
  • 残土や鉱種別の密度・締固め率を加味した原価管理・在庫評価の考え方

「いきなりドローンを内製するのは不安」「どこまで委託に任せるべきか判断したい」といった検討段階の方にとっても、 社内で検討資料として共有しやすい内容となるよう整理しています。


要点:砕石場・残土処理場の在庫管理にドローン測量が効く理由

在庫管理の本質は、「誰が計測しても同じ答えに収束する、客観性の高い体積(m³)」を、安全に・短時間で・継続的に取得することです。 特に砕石場や残土処理場のように、不整形で起伏の大きいストックパイルを扱う現場では、この条件を地上測量だけで満たすのは容易ではありません。

従来手法(TS・簡易計測)が抱える限界

地上型のトータルステーションや手持ちGPSによる在庫管理は、現在でも多くの現場で使われていますが、以下のような制約があります。

  • 安全リスク:急勾配の法面や不安定な堆積物に立ち入る必要があり、転倒・崩落リスクが常に存在する。
  • 工数負荷:計測点を増やそうとすると、現場を歩き回る時間と人員が必要になり、棚卸しに数日を要するケースもある。
  • 精度のばらつき:計測点の取り方や担当者の経験によって結果が変わりやすく、監査や取引先との合意形成に時間がかかる。
  • エリア拡大への対応力:ヤードの拡張や仮置き場所の増加に対して、既存の作業フローでは追いつかない。

このような背景から、一定規模以上のヤードでは、地上測量だけに依存した在庫管理に限界を感じている管理者も少なくありません。

ドローン測量がもたらす精度・工数・安全性のメリット

ドローン測量(写真測量/LiDAR)は、上空から広範囲を一括して計測することで、従来手法のボトルネックを解消します。

  • 高密度な点群による形状の「取りこぼし」防止:数百万〜数億点の点群データで堆積形状を捉えるため、局所的な凹凸や法面形状の変化も体積計算に反映できる。
  • 計測時間の大幅削減:人が歩いていた範囲を、ドローンで数十分〜数時間程度の飛行でカバーでき、棚卸しに割く日数を削減できる。
  • 非接触による安全性向上:作業員が堆積物そのものに立ち入る必要がなくなり、安全パトロールや保安上の懸念を大幅に低減できる。
  • 繰り返し計測への強さ:同じ計画航路で繰り返し計測することで、月次・年次の体積推移を定量的に追跡できる。

図解イメージ:ドローンによるストックパイル上空撮影と点群データ生成の流れ


背景・課題:法規遵守・税務・安全管理を同時に満たす体積計測とは

在庫量の数値は、単なる現場の「管理指標」にとどまりません。鉱山法に基づく採掘量管理や自治体への報告、税務上の棚卸し資産評価、 残土処分費やストックヤード使用料の原価計算など、さまざまな場面で公式な数値として扱われます。 そのため、計測結果には説明責任を果たせるだけの精度と根拠が求められます。

鉱山法・自治体条例・税務監査への対応要件

砕石場は鉱山法の監督下にあり、採掘計画や残置量の管理が求められます。また、産業廃棄物の中間処理施設では、 自治体への報告義務や産廃マニフェストとの整合性も無視できません。さらに、年次決算時には棚卸し資産として在庫量を評価する必要があります。

こうした場面で、手計算や簡易測定だけに頼った体積値では、監査対応時に根拠を説明しきれないリスクがあります。 測量士や専門業者が実施したドローン測量であれば、計測方法・基準点・体積算出条件を明示したうえで、 図面・報告書として第三者にも分かる形で提示することが可能です。

土質・密度・締固め率が土量コストに与える影響

体積(m³)をそのまま金額に変換できるケースは多くありません。実務上は、土質(鉱種)や含水比、締固め状況に応じた 密度(t/m³)を掛け合わせて質量(t)へと変換し、処分費や資産価値の算定に用います。

同じヤード内でも、「搬入直後の緩い状態」と「長期間堆積して締め固まった状態」では密度が変化します。 この変化を無視して一律の換算係数を用いると、棚卸し資産の過大・過小評価や、処分費の原価割れにつながる恐れがあります。

ドローン測量による高精度な体積データをベースに、鉱種別・締固め状態別の密度設定を組み合わせることで、 土量コストの見える化と、より納得感の高い在庫評価が可能になります。


ワークフロー:ドローンによる在庫(物量)計測の4ステップ

東海エアサービスでは、ドローンによる点群取得から体積計算、行政提出用の図面・報告書作成までをワンストップで対応しています。 ここでは、初めて導入される方でもイメージしやすいよう、代表的な4つのステップに分けて流れを紹介します。

ステップ1:測量計画立案とGCP(対空標識)の設計

最初に行うのは、求める精度と現場条件に応じた測量計画の立案です。要求精度(例:高さ方向±5cm)、計測頻度、 ヤードの面積や高低差を踏まえ、飛行高度や撮影間隔、対空標識(GCP)の配置を設計します。

  • 実施項目:計測範囲の確認、既存図面の収集、GCP候補位置の検討、高精度GNSSによるGCP座標測定。
  • ポイント:GCPは堆積状況が変化しにくい場所に配置し、月次・年次で繰り返し計測する際も同じ基準で比較できるよう設計します。

この段階で「どこまでを対象に、どの粒度で管理したいか」を擦り合わせしておくことで、後工程の体積計算や図面作成がスムーズになります。

ステップ2:自動航行・オブリーク撮影による点群取得

計画に基づき、ドローンが自動航行でヤードの上空を飛行し、重なりを確保しながら連続撮影します。法面形状やパイルの側面を正確に捉えるため、 上空からの真俯瞰写真だけでなく、斜め方向からのオブリーク撮影も併用します。

図解イメージ:自動航行ルートとオブリーク撮影の組み合わせによるデータ取得

  • 実施項目:適切なオーバーラップ率(例:前後80%以上・左右70%以上)での撮影、RTK/PPKによる位置情報の高精度化。
  • ポイント:影の出方や反射の影響を考慮し、撮影時刻や天候条件を選定することで、後の点群生成の品質を高めます。

ステップ3:点群処理・メッシュ化と体積計算

取得した画像とGCP情報をもとに、SfM(Structure from Motion)処理により高密度な点群データを生成します。 ここから雑草・重機・一時的な障害物などのノイズを除去し、体積計算に適したメッシュ(TINモデル)を作成します。

体積計算は、メッシュモデルと基準面(既知の地盤面、あるいは計算上のベースライン)との高低差をもとに行います。 単に「見えている部分の体積」を出すのではなく、基準面の取り方を明確にすることで、計測条件が変わっても比較可能な土量値を得ることができます。

  • 実施項目:点群の前処理・ノイズ除去、メッシュ生成、基準面設定、各ヤード・鉱種ごとの体積算出。
  • ポイント:メッシュ密度やフィルタリング条件により体積値が変動するため、許容誤差を踏まえたパラメータ設定が重要です。

ステップ4:行政提出を見据えた図面・報告書作成

最後に、体積計算結果をもとに、鉱山法・各種条例・税務監査等を見据えた図面・報告書を整えます。 ここでは、「数値そのもの」だけでなく、それを裏付ける根拠資料の整備が重要になります。

  • 実施項目:平面図(オルソ画像+等高線)、縦横断面図、体積計算書、成果報告書の作成。
  • ポイント:行政側や監査担当が求める形式・記載内容を踏まえておくことで、後からの差し戻しや再計算を避けられます。

東海エアサービスでは、測量士による内容確認を経て成果品をまとめるため、現場担当者が一から図面を作り直す必要はありません


精度とコストのチェックポイント:導入前に確認すべき重要ポイント

✅ ドローン測量の精度を左右するGCP配置とRTK/PPK

ドローン本体の性能だけでは、在庫管理に求められる精度を安定して担保することはできません。 実際の精度を決めるのは、地上に設置するGCPの配置と、RTK/PPKなどの補正測位技術との組み合わせです。

チェックポイント:ヤード全体を均等にカバーするGCP配置になっているか、堆積物ではなく不動の構造物や舗装面など、変化しにくい場所に基準点を設けているか。 また、計測頻度や要求精度に応じて、GCPとRTK/PPKのバランスを最適化できているかを確認します。

✅ 内製と外部委託のトータルコスト比較

「まずはドローンを購入して内製化したい」というご相談も多くいただきますが、初期費用だけで判断すると、 導入後にデータ処理や図面化の負担が想定以上に重くなるケースがあります。

チェックポイント:ドローン機体やソフトウェアの費用だけでなく、操縦訓練、安全教育、解析ソフトのライセンス、図面作成に必要な人件費を含めて試算しているか。 その上で、年に何回計測するか、どこまで外部委託に任せるかを比較検討することが重要です。

✅ 鉱種ごとの密度設定と締固め率をどう扱うか

ドローン測量で得られるのは「体積」の情報です。ここから「トン数」へ変換する際には、鉱種ごとの密度や締固め率の設定が欠かせません。 この設定が曖昧だと、どれだけ高精度な体積データを持っていても、最終的な在庫評価や原価計算がぶれてしまいます。

チェックポイント:過去の試験データやサンプリング結果をもとに、鉱種・ヤードごとの標準密度を定義しているか。 また、搬入直後と長期堆積後で密度を分けるなど、現場に即した運用ルールを用意できているかがポイントです。


活用事例:ドローン測量を導入した企業の改善効果

事例1:月次棚卸し工数80%削減と監査対応力の向上(砕石場)

業種:砕石・骨材製造業
課題:毎月の棚卸しをTS測量で行っており、3日間・2名体制が必要だった。測点間隔が粗く、監査対応の際に「誤差の説明」に時間を取られていた。
対応:月次でドローン測量を実施し、定型ルートでの自動航行と点群処理のフローを構築。GCPを固定配置し、毎月同じ条件で体積比較できるようにした。
結果:現地計測は半日で完了し、現場立ち入り時間を大幅に削減。体積計算の根拠資料を揃えたことで、棚卸し監査時の説明工数も軽減された。

事例2:残土の正確な体積把握による処分費・受入単価の適正化(中間処理業者)

業種:産業廃棄物中間処理業(残土・建設系廃材)
課題:搬入される残土の形状が不規則で、目視や簡易計測では体積把握にばらつきがあった。月次でのヤード残量を定量的に管理できず、処分費や受入単価の妥当性に不安があった。
対応:ヤード全体を月次でドローン計測し、搬入・搬出前後の差分体積を算出。地盤面を固定することで、期間ごとの実質的な搬入・搬出量を明確にした。
結果:処分費・受入単価の前提となる体積が明確となり、取引先への説明や社内原価管理の精度が向上。体積の推移をグラフ化することで、ヤードの使用計画にも活用できるようになった。

事例3:造成工事現場での土量精算と監査資料の整備(ゼネコン)

業種:ゼネコン(大規模造成工事)
課題:現場内に複数の仮置き場があり、時期ごとに盛土切土のバランスが変動していた。土量精算のタイミングで協力会社と認識がずれるリスクがあり、精算協議に時間を要していた。
対応:四半期ごとにドローン測量を実施し、切盛計画との比較用データを整備。点群から作成した縦横断図を活用し、計画との差異を可視化したうえで精算作業を行った。
結果:実測に基づくデータを共有することで、土量精算時のトラブルを未然に防ぐことができた。監査資料としても活用でき、社内外の説明コストが削減された。



FAQ:ドローン測量による在庫管理でよくある質問

Q. 「点群」と「メッシュ」の計算方法の違いは何ですか?

A. 点群は、ドローン測量などで取得した地表やストックパイル表面の三次元座標(X, Y, Z)の集合です。 一方、メッシュは、その点群を三角形などのポリゴンでつないで面として再構成したサーフェスモデルです。 体積計算では、多くの場合このメッシュモデルと基準面との高低差をもとに計算を行います。 行政提出や監査対応を想定する場合は、メッシュ計算条件を明示した体積値を用いることを推奨しています。

Q. 悪天候時や夜間の計測は可能ですか?

A. ドローン測量はカメラによる撮影が前提となるため、十分な視程と光量が必要です。 雨・雪・強風・濃霧などの悪条件下では、安全上の理由から飛行できません。 夜間については国土交通省の許可が必要であり、周辺環境によってはGNSS精度への影響も考慮する必要があります。 原則として、日中の天候が安定したタイミングでの計測を計画し、停止時間が短い現場では事前に詳細な飛行計画を立てることで対応しています。

Q. 行政提出用の図面作成まで一括で依頼できますか?

A. はい、可能です。東海エアサービスでは、ドローンによる点群取得から体積計算、そして鉱山法や各種条例に準拠した 平面図・縦横断面図・体積算定根拠資料・報告書の作成までを一括で承っています。 測量士によるチェックを踏まえた成果品を納品しますので、お客様側で図面の描き起こしやフォーマット調整を行う必要はありません。