植生下の裸地データをどう測る?SfM写真測量とLiDAR測量の正しい使い分けと機材選定の実務ガイド

ドローン測量は多くの現場で導入が進んでいる一方で、
山間部や樹木が密生するエリアでは
「測ったはずなのに地表面が見えない」「点群処理で植生が残り、土量計算の誤差が大きい」
といった悩みが依然として多く聞かれます。
その背景には、「SfM写真測量」と「LiDAR測量」が
そもそも何を測っている技術なのかという原理の違いが、
十分に共有されていないことがあります。本記事では、
植生下の裸地データを確保したい現場で、
どのように技術と機材を選定すべきかを整理します。
SfM(Structure from Motion)写真測量とLiDAR(Light Detection and Ranging)レーザー測量は、
ともにドローンで3次元点群を取得する技術ですが、
「何を見て距離を出しているか」という根本原理が異なります。
この原理の違いが、そのまま「植生下を測れるかどうか」の差になります。
| 比較項目 | SfM写真測量 | LiDARレーザー測量 |
|---|---|---|
| 基本原理 |
複数方向から撮影した画像間で対応点を見つけ、 三角測量により3次元座標(X,Y,Z)を算出する。 |
ドローンからレーザーパルスを照射し、 反射して戻るまでの時間差から対象物までの距離を直接計測する。 |
| 主な成果物 | 点群データ、オルソ画像、3Dメッシュモデル | 点群データ(必要に応じてカラー情報を付加) |
| 大きな制約 |
カメラから見えている表面のみを捉える。 写っていない地表面は原理的に取得できない。 |
レーザーが届く範囲であれば取得可能。 ただし機材価格・データ量・解析コストはSfMより一般に大きい。 |
問題となるのは、樹木や藪などの上にあるものを測りたいのか、
その下の地盤を測りたいのか、という目的の違いです。
SfMが得意なのは「見えている表面形状」の再現であり、
樹木の葉や枝の下に隠れた地表面までは届きません。
一方LiDARは、レーザーパルスが葉の隙間から地表面に届いた場合、
その反射もデータとして取得できます。
このとき、葉や枝からの反射と、地表面からの反射が別々のリターンとして記録されるため、
処理段階で「地表面だけを抽出する」ことが可能になります。
これが、山間部や治山工事でLiDARが選ばれる最大の理由です。
SfMとLiDARのどちらを選ぶかは、次の3点を押さえると判断しやすくなります。
SfM自体は成熟した優れた技術ですが、
その前提が「カメラから対象が見えていること」である以上、
植生下の裸地抽出には構造的な限界があります。
この限界を理解しないまま測量を進めると、
設計段階から誤った地形モデルを前提としてしまうリスクがあります。
SfMで生成される点群は、
ドローンカメラが撮影した写真に写り込んだ表面の集合です。
樹木であれば、葉・枝・幹の上面が密に点群として現れ、
その下の地盤は完全に隠された状態になります。
山間部は日影や急斜面が多く、SfMが頼りにする反射光が安定しない環境です。
また、均一な色・テクスチャの地表(砂地・雪面など)と、
非常に複雑なパターンを持つ密な植生が混在するため、
画像間での対応点探索が難しくなり、ノイズや抜けが発生しやすくなります。
結果として、SfM点群をもとに地表面だけを抽出しようとしても、
フィルタリング処理の段階で
「本来残すべき地表の点を削ってしまう」
「樹木の一部が地表面として誤分類されてしまう」
といった問題が起こり、安定した裸地モデルの作成が難しくなります。
LiDARが植生下の測量に強いと言われる最大の理由は、
レーザーパルスが複数の対象に反射した情報を分けて取得する
「マルチリターン」機能にあります。
LiDARでは、ドローンから地表に向けてレーザーパルスを連続的に照射し、
その反射光がセンサーに戻るまでの時間から距離を算出します。
このとき、ひとつのパルスが
①樹木の葉 → ②枝 → ③地表
と複数の対象に当たる場合があります。
マルチリターン対応のLiDARでは、
これらの反射を別々のリターンとして捉え、
1ショットあたり複数の距離データとして記録できます。
この「最後に返ってきたリターン」が地表面由来である可能性が高いため、
処理段階で地表面の抽出に利用されます。
LiDARで取得した点群データには、空中の塵や一時的なノイズも含まれますが、
各点には高さ・反射強度・リターン番号などの属性が付いています。
これらの情報を組み合わせることで、点群を自動的に分類していきます。
こうした処理を経ることで、樹木を仮想的に「削ぎ落とした」状態の地形モデルが得られ、
土量計算や治山計画に直接使える裸地データを安定して生成できます。
現場での判断は、「理論的にどちらが良いか」ではなく、
「このプロジェクトでどこまでの精度が必要か」を起点に考えるのが現実的です。
代表的な3パターンを整理します。
適用シーン:伐採済み造成地、大規模宅地開発、仮設ヤードなど、
植生が薄い、または事前に整理されているエリア。
採用技術:SfM写真測量を主軸とし、
必要に応じて一部を現場測量で補完。
ポイント:
オルソ画像と点群を同時に取得できるため、現況把握と数量算出を一度に行えます。
植生が少ないため、後処理で適切にフィルタリングすれば、
DEM(Digital Elevation Model)として十分な精度の地形モデルを得やすく、
コストパフォーマンスに優れた選択肢となります。
適用シーン:
急峻な山間部、既存森林内の砂防ダム計画地、林道の新設・付け替えルート検討など。
採用技術:ドローン搭載型LiDARによる測量を基本とし、
必要に応じて地上型レーザースキャナーやGNSSで補正・検証。
ポイント:
設計の前提となるのは、樹木を除いた地形断面です。
SfMでは見えない地表面をLiDARで安定的に取得することで、
土砂災害リスク評価や擁壁・法面の設計に必要な精度を確保できます。
結果として、設計変更や追加工事に伴う手戻りコストを大きく抑えられます。
適用シーン:橋梁・高架道路・ダム・構造物の点検と同時に、
周囲の地形や斜面状況も把握したいケース。
採用技術:構造物の状態把握には高解像度のSfM、
周辺の植生下を含む地形把握にはLiDARを組み合わせるハイブリッド方式。
ポイント:
構造物のクラックやコンクリート表面の状態確認には、
テクスチャ情報が豊富なSfMが向いています。
一方で、構造物周辺の斜面や沢筋の地形把握にはLiDARが有効です。
両者の点群を統合することで、
「構造物」と「周辺地形」を一体で評価できる3Dモデルを構築できます。
ドローン搭載型LiDARは、測量会社や建設コンサルにとって大きな投資です。
カタログスペックだけで判断するのではなく、
「実際の現場でどのような精度・再現性が得られるか」
という観点でチェックすることが重要です。
LiDAR機材は大きく「測量グレード」と「マッピンググレード」に分類されます。
導入・レンタルの際には、次のポイントを比較検討してください。
LiDARだからといって、地上での検証が不要になるわけではありません。
SfMと同様に、GNSSなどで取得した検証点(チェックポイント)との比較により、
実際の精度を確認することが求められます。
報告書には、次のような項目を整理して記載しておくと、
発注者・協力会社とのコミュニケーションがスムーズになります。
これらを整理しておくことで、
「どこまで信頼できる裸地データなのか」を
第三者にも客観的に説明できるようになります。
ドローン測量や3D計測の技術選定・コスト最適化に関して、
東海エアサービスでは他にもコーナーストーン記事・技術コラムを公開しています。
本記事とあわせてご覧いただくことで、
プロジェクト全体の設計・施工計画に役立てていただけます。
A1.
あります。どちらもX,Y,Z座標を持つ点群データ(LAS/PLY/TXTなど)として出力できるため、
共通の点群処理ソフトウェアで読み込み・統合が可能です。
ただし、SfMにはRGB(色)情報が、LiDARには反射強度情報が付与されていることが多く、
属性の違いを理解して処理する必要があります。
ハイブリッド測量では、座標合わせ(レジストレーション)の精度管理がとくに重要です。
A2.
広葉樹の落葉期など、地表がよく見えている条件であれば、
SfM写真測量のみで十分な裸地データを得られる場合があります。
一方で、針葉樹林のように冬でも葉が残る森や、下草が密な斜面では、
落葉期でも地表面が見えないケースが多く、LiDARが有利になります。
最終的な判断は、
「地表がどの程度可視になっているか」と「要求される地形精度」
で決めるのが現実的です。
A3.
LiDARのROIは、単に機材費を回収できるかではなく、
「高精度な裸地データが必要な案件の数」と
「設計変更・手戻り・工期遅延の削減効果」で評価するのが有効です。
たとえばSfMのみを前提とした地形モデルに起因して、
現場での追加掘削や構造物の再設計が発生した場合、
1案件あたり数十万〜数百万円規模のコストインパクトになることがあります。
それを年間で何件削減できるかを試算し、
さらに夜間計測や低照度条件でも測量できることによる
測量可能時間の拡大=工期短縮も含めて評価すると、
投資回収のイメージを描きやすくなります。
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現場住所と用途を選ぶだけ。最短当日にお見積りをお送りします。
「この現場はSfMで良いのか?LiDARが必要なのか?」
といった技術選定のお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
現場条件やご予算に応じて、最適なワークフローと機材構成をご提案します。
ドローン測量・三次元計測・赤外線調査のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
現場の課題に合わせた最適なプランをご提案します。