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ドローン<a href="https://tokaiair.com/glossary/as-built-management/" class="glossary-link">出来形管理</a>の「精度が出ない」を解消する方法:ゼネコン内製化を失敗させない実務プロトコルドローン測量による出来形管理で「精度が出ない」「TSに戻してほしい」と言われる原因と対策を、ゼネコンのICT担当・現場監督向けに詳しく解説。RTKドローンの限界やSfM写真測量のクセを踏まえ、GCP(標定点)設置とワークフローで出来形精度を確実に出すプロの手順を紹介します。”>
ICT活用工事 / 出来形管理

ドローン出来形管理の「精度が出ない」を解消する方法:ゼネコン内製化を失敗させない実務プロトコル

大手ゼネコンや中堅クラスの建設会社でも、ドローン測量を導入・内製化したものの、現場からは「TSの方が安心だ」「出てきた数値が信用できない」と評価され、最終的に従来の測量に逆戻りしてしまうケースが少なくありません。多くの場合、その背景には、写真測量(SfM)という手法の原理的なクセと、出来形管理で求められる本来の精度要件がきちんと噛み合っていないという問題があります。

この記事では、ICT施工をきちんと成果に結び付けたいゼネコン・土木建設会社のICT推進担当者・現場監督の方向けに、ドローン写真測量で生じる精度のバラつきの正体と、標定点(GCP)設置やワークフローを通じて出来形精度を安定的に出すためのプロトコルを、実務目線で整理します。

この記事を読むメリット

本記事を読み進めることで、ゼネコンのICT推進担当者・現場監督・測量会社の技術者は、ドローン出来形管理の品質を安定させるために必要な技術的なポイントと現場での段取りを具体的にイメージできるようになります。

  • ドローン写真測量(SfM)が本質的に抱える精度限界と誤差要因が整理できます。
  • RTKドローンだけでは精度保証にならない理由と、その限界を補う考え方が分かります。
  • 公共測量・出来形管理基準に対応するための、GCP(標定点)の配置計画と座標精度の考え方が理解できます。
  • データ取得から出来形帳票作成まで、内製化を成功させるための現実的なワークフローを把握できます。

要点:ドローン出来形管理「精度が出ない」現場で何が起きているか

ドローンを使った出来形管理は、国交省の推進もあり広く普及してきましたが、「説明を聞いたほど楽にならない」「最終的にはTSで測り直している」といった声も根強くあります。特に内製化を進めた現場で、数回の運用を経て「やっぱり従来のやり方に戻そう」と判断されるパターンは少なくありません。

現場がドローン成果を「使えない」と判断する理由

現場がドローン測量を受け入れない最大の理由は、単純に「楽だから」「早いから」ではなく、出来形管理で求められる寸法と標高の信頼性が担保されているかどうかです。以下のような状態が一度でも起きると、現場の信頼は一気に失われます。

  • 地盤標高が設計値と合わない:緩勾配や平坦部で、数cm〜数十cmクラスのズレがまとまって出てしまう。
  • 構造物の寸法が図面と一致しない:出来形帳票の根拠として提示しても、「この値で本当に検査を通せるのか」という不安が残る。
  • 点群の取り込み範囲が不明瞭:目的外の範囲やノイズ点が多く、本当に計測したいところがどこまで押さえられているか判断しづらい。

出来形管理に求められる精度とトレーサビリティ

i-Constructionの出来形管理要領や自治体基準では、ドローンを含むICT計測の成果も、従来測量と同等以上の精度と再現性を持つことが求められています。その鍵となるのがトレーサビリティ(追跡可能性)です。

具体的には、使用した機器(ドローン、GNSS受信機、TSなど)の校正状況、現場で構築した基準点・GCPの座標値、観測条件、処理ソフトの設定、計算手法などが一貫して記録されていることが重要です。この「説明できる状態」がなければ、どれだけ見た目がきれいな点群やオルソ画像が出来ていても、出来形検査での説得力は弱いままです。


課題:なぜドローン写真測量(SfM)は精度が安定しないのか

写真測量(Structure from Motion; SfM)は、複数の写真から3D形状を復元する技術です。非常に便利な一方で、原理的な特徴を理解せずに運用すると、「現場ごとに精度が変わる」「この現場ではうまくいったのに次の現場で崩れる」といった事態を招きがちです。

SfMの原理とGSD・カメラ姿勢・テクスチャの影響

SfMは多数の画像から特徴点を抽出し、それらの相対位置関係を最適化することで3D点群を生成します。このとき、以下の要素が精度を大きく左右します。

  1. GSD(Ground Sample Distance):画像1ピクセルが地上の何cmに相当するかを示す指標で、飛行高度やカメラの画素数で決まります。GSDが大きい(=粗い)と、相対精度も悪化します。
  2. カメラ位置・姿勢の不確実性:ドローン搭載のGNSS/IMU情報だけでは、カメラのレンズ中心位置や向きを完全に把握できません。わずかなズレが膨らみ、広い範囲で「ドーム状」「碗状」に歪んだ点群が生成されることがあります。
  3. テクスチャ(模様)の有無:草地・水面・単調なコンクリートなど特徴の少ない面では、特徴点がうまく取れず、局所的にノイズや穴が発生したり、形状が崩れたりします。
SfM処理イメージ(特徴点抽出〜点群化の概念図を挿入)

「RTK機体ならGCP不要」という誤解が生むリスク

近年のドローンは、RTK/PPK機能を標準搭載した機体も多く、センチメートル級の位置情報が取得できることが売り文句になっています。ただし、「RTKが付いていればGCPは要らない」と判断してしまうと、出来形管理では危険です。

  • 鉛直精度の限界:RTK/PPKは平面(X,Y)には強いものの、標高(Z)はどうしても精度が落ちやすい傾向があります。出来形で最もシビアに見られるのは標高であり、ここが数cmズレると土量計算や不陸チェックに直接響きます。
  • レバーアームによるズレ:GNSSアンテナの位置とカメラレンズ中心には物理的な距離(レバーアーム)があり、この補正が完全でないと、点群全体がわずかに傾いたりシフトしたりします。

まとめると、RTK機体はGCPの数を減らすことはできても、GCPの代わりにはならないというのがプロの共通認識です。最低限のGCPとチェックポイントを適切に配置することで、RTK座標とSfMのずれを吸収し、出来形精度を保証します。


解決策:出来形精度を担保するGCP(標定点)設置プロトコル

ドローン出来形管理の肝は、最終的にどこまで「絶対座標として信頼できるか」です。その根っこを支えるのがGCP(Ground Control Point / 標定点)です。ここが疎かだと、どれだけ高価な機体・ソフトを使っても成果は安定しません。

出来形測量に必要なGCP配置計画と座標精度の考え方

GCPは、SfMで構成された相対的な3Dモデルを、現実世界の座標系に「固定するためのアンカー」です。出来形管理の観点では、次の点を押さえる必要があります。

  • 配置計画:計測範囲の四隅には必ずGCPを配置し、中央部に少なくとも1点、それに加え周辺から中心部に向けてバランス良く配置します。高低差がある現場では、切土側・盛土側・法肩など、高さが変わる位置にも積極的に配置することで、標高の信頼性が向上します。
  • 座標精度:GCP座標は、既設基準点を起点にTS光波や高精度GNSS(スタティック観測など)で求めます。目安として数mm〜1cm程度の精度を確保しておくことで、出来形帳票の「根拠」として胸を張って提示できます。ドローン単体のGNSS測位だけでGCPを求めてしまうと、精度保証の意味を失ってしまいます。
GCPの配置例(四隅+中央+高低差箇所を示す平面図イメージ)

TS光波+GNSSを組み合わせた測量会社の実務フロー

当社のような測量専業会社では、出来形精度を保証するために、GCP設置・観測を次のような流れで実施します。

  1. 基準点網の構築:まず公共基準点や既設の既知点から、TSやGNSSを用いて現場内に「作業基準点」を構築します。ここで座標系・標高系を明確に決めておきます。
  2. GCP観測:設置した対空標識(GCP)について、
    • TS光波観測:視通の取れる構造物周りや、高精度が求められる範囲ではTSでミリ単位を狙います。
    • ネットワーク型RTK-GNSS:広範囲にGCPを打つ現場では、RTK-GNSSで効率良く座標を取得します。ただし衛星環境やマルチパスをチェックし、観測時間を十分取るなど慎重に運用します。
  3. チェックポイント(CP)の設定:GCPとは別に、点群精度の検証専用としてCPを配置します。CPはSfM処理には使わず、最終的な残差を確認するためだけに使うことで、「どの程度の誤差で収まっているか」を客観的に示せます。

ワークフロー:ドローン測量から出来形報告までの一気通貫プロセス

出来形精度は、計測だけでなく、その前後の工程を含むトータルなプロセスで決まります。ここでは、ドローン出来形管理の標準的なワークフローを3ステップで整理します。

ステップ1:高精度なGCP測量と座標決定

ドローン飛行より前に、GCPとCPを計画位置に設置し、TS光波や高精度GNSSで3次元座標(X,Y,Z)を観測します。観測結果は、採用する座標系・標高系(公共座標系・基準水準点など)に基づいて整理し、計測手簿として保管します。この手簿が出来形帳票の「裏付け書類」となります。

ステップ2:飛行計画・撮影条件の最適化とデータ取得

SfMに適した前後・左右のオーバーラップ率(例:前後80%、左右70%以上)を確保しつつ、求めるGSDから飛行高度を決めます。風速・太陽光の方向・影の出方なども考慮し、出来るだけ条件が安定した時間帯を選ぶことがポイントです。RTK機体を使用する場合は、カメラ位置情報も記録しつつ、後処理でGCP情報と併用できるようセットアップします。

ステップ3:SfM処理・点群整備・出来形帳票化まで

取得した画像は、Pix4DやAgisoft Metashapeなどの専用ソフトでSfM処理を行います。この際、ステップ1で求めたGCP座標を正確に入力し、バンドル調整でモデル全体の歪みを抑えます。

点群生成〜TIN作成〜出来形ヒートマップまでの処理フロー図を挿入

生成した点群データから、出来形管理の対象となる範囲のみを抽出し、TIN(三角網)や格子メッシュを作成して設計データと比較します。その上で、以下のような成果物をまとめていきます。

  • 設計面と実測面の差を色分けした出来形管理図(ヒートマップ)
  • GCP・CPの残差一覧や観測手簿など精度検証用の帳票
  • 設計と実測の差分から算出した土量計算書や断面図一式

失敗を防ぐチェックポイントと典型的な落とし穴

ドローン出来形管理の「成否」は、撮影テクニックだけでなく、計画・データ処理・帳票化の全てのフェーズに潜むリスクをどれだけ潰せるかで決まります。特に注意したいポイントを整理します。

標高精度と平面精度のギャップを見落とさない

多くの出来形管理では、標高(Z軸)の精度が最重視されます。平面位置が数cmズレていても許容されることはありますが、標高が数cmズレると土量計算や不陸管理にダイレクトに影響します。RTKドローンは平面精度に強い一方で鉛直精度は相対的に弱くなるため、GCPの標高をTS光波などでしっかり押さえ、鉛直方向のアンカーを強化することが重要です。

点群整備・ノイズ処理が出来形結果に与える影響

生の点群には、車両・作業員・仮設材・樹木など、出来形管理の対象外となる点が多く含まれます。これらを安易に削り過ぎると、地盤面そのものまで削除してしまい、結果として出来形数量が過小評価されることがあります。逆にノイズを残し過ぎると、地盤面が凸凹に見えて、不必要な是正指示につながる恐れもあります。どこまでを地盤面として扱うかを、設計・発注者と事前にすり合わせておくことが大切です。

座標系・標高系の統一を最初に確認する

出来形管理では、設計データ・GCP座標・ドローン点群・TS測量結果など、複数ソースのデータが混在します。これらが同一の座標系・標高系で統一されていないと、後工程で原因不明のズレとして表面化します。特に標高は、平均海面に基づく標高なのか、仮定水準点なのかを含め、発注者・元請と早い段階で確認し、処理の最初から最後まで一貫させることが肝心です。

計測期間中の現場変化をどう扱うか

広い現場では、GCP観測日とドローン飛行日・TS追測日がどうしてもずれてしまうことがあります。その間に土砂搬入や締固め、仮設材の移動などが起きれば、点群は「その時点の状態」を正直に反映してしまいます。可能な限り計測期間を短くまとめるか、明らかに地盤が変化した箇所は再撮影・再計測するなど、工程と測量の連携が欠かせません。


導入事例:高精度ドローン測量で出来形管理を刷新したプロジェクト

適切なGCP設置とワークフローを整えることで、ドローン出来形管理は「便利なオプション」から「なくてはならない基盤技術」へ変わります。ここでは、東海エアサービスが実務として支援したイメージに近い事例を紹介します。

事例1:道路改良工事における切盛土の土量管理(ゼネコンA社)

課題:延長が長い道路拡幅工事で、毎月の出来形確認と土量集計に時間がかかり、設計変更や出来高精算の判断が後ろ倒しになっていた。TSによる断面測量では、測点数を増やすほど現場担当者の負担が増え、ヒューマンエラーの懸念もあった。

対応:既存の公共基準点を起点に、ネットワークRTK-GNSSで作業基準点とGCP網を構築。RTKドローンと組み合わせ、週1回のペースで現場全体を撮影。GCPを用いたSfM処理で点群の絶対精度を確保し、設計縦横断と差分を自動算出する仕組みを構築した。

効果:土量計算に関わる作業時間を約70%削減。出来形ヒートマップにより、「どこをどこまで修正すべきか」を一目で把握できるようになり、測り直しや手戻りが大幅に減少。監督員への説明もスムーズになった。

事例2:太陽光発電所造成地の不陸計測と全数チェック(土木建設B社)

課題:大規模太陽光発電所の造成工事で、架台据付のために厳しい不陸基準が設定されていた。従来のポイント測量では全域をカバーしきれず、据付後に不陸が発覚するリスクを抱えていた。

対応:造成エリア全体をカバーするGCP網をTSで構築し、高密度・低高度でドローン撮影を実施。点群から地盤面のみを抽出し、設計高との高低差をメッシュ状に算出。許容範囲を超えた箇所を図化し、再整形の指示書として活用した。

効果:広大な造成地の不陸チェックを半日ほどで完了し、従来方式に比べて工期と手間を大幅に削減。架台据付後の不具合リスクを抑えつつ、ドローン点群による「ほぼ全数検査」に近い品質管理が実現した。


FAQ:ドローン出来形管理の精度に関するよくある質問

点群データと出来形管理図書はどのように紐づければ良いですか?

A. 点群データはあくまで「計測結果の生データ」であり、そのまま帳票にはなりません。出来形管理図書では、点群から生成したTINやメッシュと設計面の比較結果を図面化・表形式で整理し、その裏付けとして点群・GCP残差レポート・観測手簿を添付する構成が一般的です。電子納品が必要な案件では、点群自体も合わせて納品し、検査側が再計算できる状態を用意します。

機体選定は「RTK機能の有無」だけ見て決めても大丈夫ですか?

A. RTK機能はほぼ必須に近い要素ですが、それだけで機体を選ぶのは危険です。出来形では、カメラレンズの歪み特性やシャッター方式GNSSアンテナの性能、機体の飛行安定性なども精度に直結します。重要なのは、機体のスペック表ではなく、「その機体+運用で、標高精度を含めた出来形要件が満たせるかどうか」です。実績のある機種と、適切な測量・処理ノウハウのセットで検討することをおすすめします。

従来のTS測量と同等の精度をドローンで保証できますか?

A. 適切なGCPとワークフローを組めば、十分に近いレベルの精度を確保できます。平面位置については、場合によってはTSよりも広域を均一な精度でカバーできるケースもあります。一方、局所的な鉛直精度だけを見ればTSに分があります。そのため、「面」を広くカバーする部分はドローン、「点」や「線」でシビアに見る箇所はTSといった使い分けが現実的です。TS起点の高精度GCPをベースにすることで、TS測量の信頼性を点群全体に展開することができます。


ドローン測量や点群データの活用で、工事コストや工期・品質をどのように最適化できるかについては、以下のガイドもあわせてご覧ください。


高精度出来形管理のご相談は東海エアサービスへ

ドローン出来形管理の精度に不安がある、発注者や監督員への説明に困っている、あるいは内製化を進めているが社内に判断軸を持った人材が少ない──そのような状況であれば、一度プロの測量会社にご相談いただくのがおすすめです。

東海エアサービスは、公共測量レベルのGNSS・TS観測と、ドローン・レーザースキャナによる3D計測・解析を組み合わせ、出来形管理・土量計算・施工管理を「根拠のある数字」で支えることを得意としています。要件が固まりきっていなくても構いません。「今の運用でどこまで精度が出ているのか知りたい」といった段階から並走いたします。

東海エアサービスの強み

  • 高精度GNSS/TS測量機によるGCP・基準点観測で、絶対精度をしっかり確保。
  • 多数のICT活用工事で培った点群処理・出来形帳票作成のノウハウを保有。
  • ドローン・レーザースキャン・TSなど、現場条件に応じた最適な計測組み合わせを提案可能。

© Tokai Air Service Co., Ltd.

本記事は一般的な技術情報および事例に基づいて作成されており、実際の工事の運用や法規については、発注者および元請けの指示、並びに現地の法規に従ってください。記事内容の正確性には万全を期していますが、その完全性・正確性を保証するものではありません。

TAS Technical Writing Team(技術記事監修)