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Point Cloud / Cloud Strategy / Data Management

点群データの容量とクラウドストレージ:
失敗しない保存・共有戦略とインフラ課題の解決策

UAV測量や地上型レーザースキャナーの普及により、現場の3次元データ化(点群データ)は急速に進んでいます。 一方で、点群は一般的なCADデータや写真と比べてファイルサイズが桁違いに大きく、 「とりあえずクラウドに置いておけばよい」という発想では、すぐに転送・保存・共有の限界にぶつかります。

本コラムでは、点群データの実務的な容量予測から、 汎用クラウドストレージ活用の典型的な失敗パターン、 そしてLAS/LAZ形式を前提とした安全かつ高速な共有戦略までを整理。 インフラ担当者や技術部門の責任者が、プロジェクト初期の段階で 「どの程度のストレージと回線を用意すべきか」「どんなクラウド構成にすべきか」を判断できるようになることを狙いとしています。

この記事で分かること(Overview)

点群データの容量問題は、「ストレージが足りない」という単純な話にとどまりません。 ダウンロード待ちで作業者が手待ちになり、別拠点のチームにデータが届かず、 結果として工期遅延や手戻りにつながることも少なくありません。

  • 容量の予測:プロジェクト規模と計測手法から、必要ストレージを事前に見積もる考え方。
  • 転送速度のボトルネック解消:LAZ圧縮やストリーミング表示を前提にした共有設計。
  • クラウド選定のポイント:汎用クラウドと点群専用サービスの役割分担と選び方。
  • セキュリティと権限管理:協力会社と安全にデータ共有するための基本設計。

「とりあえずデータはあるが、うまく回っていない」状態から、 点群を前提にした安定したデータパイプラインへ移行するための参考としてご活用ください。

要点:点群データ運用におけるインフラ面の3大課題

点群データは、数千万〜数十億点の3次元座標(X, Y, Z)の集合です。 1プロジェクトで数十GB〜数百GBのデータを扱うことも珍しくありません。 この巨大なデータ量が、現場のインフラに次の3つの課題をもたらします。

課題1:巨大なファイルサイズがもたらす転送と処理のボトルネック

現場で取得した点群データを、本社や設計会社に送ろうとすると、 回線状況によってはアップロードに数時間〜丸一日かかることもあります。 受信側でも、ローカルPCへのダウンロードと展開に時間を要し、 ノイズ除去やTIN作成、BIM連携などの処理でPCがフリーズする、といった声もよく聞かれます。

こうした「データはあるが使える状態にならない」時間が積み重なることで、 実質的な生産性が大きく低下します。

課題2:複数プロジェクト・多拠点間での共有とセキュリティ

点群データは、測量・設計・施工管理・維持管理・協力会社など、 多数の関係者で共有される性質を持っています。 汎用クラウドやメール添付で運用していると、 「誰が最新データを持っているのか」「どこまで共有してよいのか」が不明瞭になり、 バージョンの混在やセキュリティリスクが発生しやすくなります。

課題3:バージョン管理とアーカイブの複雑化

工事進捗に合わせて点群を定期的に再計測すると、 「着工前」「中間」「竣工」などの時系列データが蓄積していきます。 これらを将来の改修やクレーム対応に備えて保管するとなると、 どのタイミングのデータを・どの粒度で・どこに保存するのかというアーカイブ設計が必要です。 一般的なオフィス文書と同じルールでは運用しきれません。


点群データの容量が巨大化する要因の徹底分析

「密度(点間隔)」が容量に与える影響

点群データの容量は、基本的には「点の数」×「1点あたりのデータ量」で決まります。 点の数は、計測時の点間隔(GSD:Ground Sample Distance)に強く依存します。 例として、100m×100m(1ha)の敷地を比較してみます。

計測手法点間隔(GSD)点の数(概算)容量(LAS形式・概算)
従来の地上測量1m〜5m数千点数MB
UAV写真測量(低空)約3cm約1,100万点約200MB〜400MB
地上型レーザースキャナー約5mm数億点1GB〜5GB
広域レーザースキャン約1cm数十億点数十GB

密度を細かくすればするほど、点の数は指数関数的に増加します。 特に設備配管の詳細モデリングや高精度な出来形管理ではミリ単位の密度が求められ、 1案件あたり数百GBに達するケースも珍しくありません。

属性情報」の付加が容量を押し上げる仕組み(RGB、Intensity、法線ベクトルなど)

点群データには、座標(X, Y, Z)だけでなく、1点ごとにさまざまな属性情報を付加できます。 これらは活用の幅を広げる一方で、ファイルサイズを確実に押し上げます。

  • RGB情報:可視光カメラ由来の色情報。LASでは1点あたり数バイトが追加され、容量はおおよそ1.5倍程度に。
  • 反射強度(Intensity):レーザーの返りの強さ。材質判定や地物分類に有効。
  • 法線ベクトル:点が属する面の向き。BIM/CIMでモデリングする際の面判定に役立ちます。

「何でもかんでも全部乗せ」で属性を増やすと、 あっという間に現場や回線、クラウド容量がひっ迫します。 プロジェクトの目的に応じて必要な属性だけを残す設計が重要です。

【簡易式】点群のファイルサイズを予測する考え方

点群のファイルサイズは、次のイメージで概算できます。

ファイルサイズ(バイト) ≒ 点の総数 × 1点あたりのバイト数 × 圧縮係数

  • 点の総数:計測範囲とGSD(点間隔)から算出。
  • 1点あたりのバイト数:座標+属性で通常16〜32バイト/点程度。
  • 圧縮係数:未圧縮LASなら1.0、LAZ圧縮なら0.1〜0.3程度が目安。

プロジェクト初期の段階で「どの程度の密度が必要か」を検討し、この式でざっくりと必要容量を把握しておくと、 ストレージ選定や回線計画の精度が格段に上がります。


クラウドストレージ戦略の失敗事例と教訓

失敗事例1:汎用クラウド(OneDrive・Driveなど)による処理遅延

よくあるのが「容量無制限プランの汎用クラウドに全部置いておけば安心」という発想です。 実際には、点群のような巨大な単一ファイルを頻繁にやり取りするワークロードに、 汎用クラウドは最適化されていません。

  • ローカルへの同期やダウンロードに時間がかかり、作業者が待たされる。
  • 一部だけ見たいだけなのに、毎回フルサイズを取得しなければならない。

解決の方向性としては、点群専用のクラウドビューアやストリーミングサービスを併用し、 「見る・計測するためのデータ」と「解析やモデリング用のマスターデータ」を役割分担することが重要です。

失敗事例2:不適切なデータ圧縮による品質劣化

容量削減を急ぐあまり、点群の間引き(ダウンサンプリング)や座標の丸め込みを 安易に行ってしまうケースも散見されます。 一度情報を捨ててしまうと、ミリ単位での出来形評価や衝突チェックなどで 取り返しのつかない精度劣化が発生します。

  • 圧縮は、情報を失わない可逆圧縮(LAZ形式)を基本とする。
  • 表示用に間引く場合も、「マスターとは別に」「用途を限定して」行う。

失敗事例3:セキュリティ設定の不備と情報漏洩リスク

点群には、建設予定地やプラント設備など、外部に出ると問題となり得る地理情報が含まれます。 外部協力会社と共有する際に、共有リンクに期限やパスワードを設定していない、 プロジェクト終了後も権限を残したままにしている、といった運用は 情報漏洩リスクを高める典型例です。

点群を扱うクラウドでは、フォルダ単位・プロジェクト単位で、 アクセス権限を細かく設定できる仕組みを前提に選定すべきです。


成功する点群データ保存・共有戦略:3つの柱

戦略1:LAS形式でのバイナリ保存と可逆圧縮(LAZ形式)の活用

点群の標準フォーマットであるLAS形式は、バイナリ保存のため もともとテキストより効率的ですが、マスターデータの保管には さらにLAZ形式への可逆圧縮を基本とするのがおすすめです。

  • LAZ形式なら、元のLASの約10〜30%程度の容量まで削減可能。
  • 復元すれば完全に同一のLASを再現できるため、品質を落とさずに保管できる。

実務的には、「マスターデータはLAZ」「作業時に必要な範囲だけ展開」という運用が、 ストレージコストとパフォーマンスのバランスが良好です。

戦略2:点群専用クラウドサービスの併用と役割分担

点群データを扱う場合、汎用クラウドだけで完結させるのではなく、 点群・BIM/CIMに特化したクラウドサービスを併用し、 役割を分担させる設計が有効です。

  • 大規模点群の高速表示・ナビゲーションが可能。
  • BIM/CIMモデルやCADデータとの座標自動整合に対応。
  • プロジェクト単位での権限管理・ログ管理がしやすい。

汎用クラウドは「長期保管・バックアップ」、点群専用クラウドは「閲覧・計測・レビュー」と、 目的ごとに最適なツールを組み合わせる発想がポイントです。

戦略3:ストリーミング配信とブラウザ表示を前提にした共有設計

ギガバイト級の点群を関係者に共有する際、 「ファイルを丸ごとダウンロードしてから開いてもらう」という前提を捨て、 ブラウザ上でのストリーミング表示を基本にします。

  • 閲覧側は高スペックなPCを持っていなくても、ブラウザだけで表示・距離計測が可能。
  • データ全体ではなく、画面に必要な部分だけ順次読み込むため、実効的なレスポンスが良い。

この設計により、「ファイル転送」の手間そのものを減らし、 どこからでも同じデータにアクセスできる一元管理が実現します。


【実務課題Q&A】容量・転送速度・セキュリティ

Q1. 1haの現場で、点群データ容量はどのくらいを見込むべきですか?

A. 目安として、UAV写真測量(GSD約3cm)で200MB〜400MB(LAS形式)地上レーザースキャナー(点間隔約5mm)で1GB〜5GB(LAS形式) 程度になります。 ただし、地物の複雑さや重複撮影の度合いによって変動します。 これらをLAZ形式に圧縮すれば約1/10程度まで削減できるケースが多く、 プロジェクト計画時の容量試算の基準値として使えます。

Q2. ギガバイト級の点群データを、関係者とストレスなく共有するには?

A. 基本戦略は、「LAZで圧縮」+「点群専用クラウドでストリーミング表示」です。 マスターデータはLAZ形式で保存・保管し、確認用・レビュー用には 専用クラウドにアップロードしてブラウザで閲覧してもらいます。 どうしてもファイル送付が必要な場合は、有効期限付きのセキュアなファイル転送サービスを利用し、 メール添付でのやり取りは避けるのが無難です。

Q3. クラウドで点群を保存する際、最優先で検討すべきセキュリティ対策は?

A. もっとも重要なのは、最小権限の原則(Least Privilege)です。 プロジェクトごと・会社ごとに「閲覧のみ」「ダウンロード禁止」「特定フォルダのみアクセス可」などの 制限を細かく設定し、必要以上に権限を付与しないことが基本となります。 共有リンクを発行する場合は、必ず有効期限とパスワードを設定し、 プロジェクト終了時には速やかに権限見直し・リンク無効化を行う運用ルールを作ることをおすすめします。


データコンサルティング:お客様のインフラ課題を解決

点群データの運用は、「計測して終わり」ではなく、 取得 → 処理 → 保存 → 共有 → アーカイブまで一連のパイプラインとして設計する必要があります。 どこか一箇所でもボトルネックがあると、そこから全体の生産性が下がってしまいます。

最適なデータパイプライン構築の支援

東海エアサービスでは、お客様の計測規模や年間案件数、社内セキュリティポリシーを踏まえ、 次のような観点から点群データパイプラインの設計・改善を支援します。

  • ストレージ選定:オンプレ/クラウドの使い分け、冗長構成、バックアップポリシー。
  • データ変換・圧縮:LAS⇔LAZ変換、タイル化や領域分割など、処理効率を高めるためのデータ構造設計。
  • セキュアな共有体制:協力会社との連携フロー、アクセス権限設計、ログ管理の方針策定。

まずは「どれくらい容量があるのか」を把握するところから

点群データのインフラ設計は、現状の容量と今後の増加ペースを把握するところから始まります。
下記の無料ツールで、おおよその点群容量とインフラコストのイメージをつかんでいただけます。

「どのクラウドを選ぶべきか」「自社PCスペックでどこまで処理できるか」など、 個別事情に応じたご相談も随時承っています。 インフラの制約で点群活用をあきらめる前に、ぜひ一度ご相談ください。

3D計測・点群活用をより広く捉え、現場のDXを段階的に進めていくための関連コラムもご用意しています。

土量計算の誤差をゼロに近づける方法

土量計算の精度向上ガイド

プラント配管の3Dデータ化戦略

配管アイソメと点群活用術

点群データの保存・共有戦略に関する無料相談

点群データ運用の最適解は、会社規模・プロジェクト数・既存インフラによって大きく変わります。 「今のやり方が正しいのか」「数年後の容量増加に耐えられるのか」といった不安があれば、 一度専門家の目線で棚卸ししてみることをおすすめします。

東海エアサービスは、点群計測からセキュアなクラウド連携、BIM/CIM活用まで、 一気通貫のデータパイプラインを前提にサポートします。

東海エアサービス株式会社(Tokaiair Service Co., Ltd.)

建設・インフラ分野の3次元計測・解析に特化した技術サービスを提供。 点群データの大容量化対策、BIM/CIM連携、インフラ設計の最適化を通じて、 プロジェクトの生産性向上とDX推進をご支援します。

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免責事項:本コラムに記載されている容量の概算やクラウドサービスに関する情報は一般的なものであり、特定の環境での動作やコストを保証するものではありません。データの保存および共有戦略の策定にあたっては、必ずお客様のセキュリティポリシーと契約条件に従って行ってください。

TAS Technical Writing Team(技術記事監修)