木質チップの在庫管理は「目視・概算」から卒業する
製紙工場・バイオマス発電所の「見えない損失」をなくす。
不整形な堆積山をドローンと点群技術で正確に計測し、
棚卸しの精度向上とコスト適正化を実現します。
製紙原料やバイオマス燃料として大量にストックされる木質チップやPKS(パーム椰子殻)。 これらの在庫管理において、多くの工場が抱える共通の悩みがあります。それは「帳簿上の理論在庫と、現場の実在庫が合わない」という問題です。
本記事では、これまでベテラン担当者の「目視」や「巻き尺計測」に頼っていた在庫量の算出を、 ドローンや3Dレーザースキャナを用いてデジタル化・適正化する手法について、実務的な観点から解説します。
要点:木質チップ在庫管理の「不透明さ」をなくす
なぜ「帳簿在庫」と「実在庫」が合わないのか
チップヤードにおける在庫管理の難しさは、その「形状の不均一さ」と「物性の変化」にあります。 入荷時はトラックスケールで重量(トン)管理されていますが、ヤードに投入された瞬間から、 ブルドーザーによる締め固め、積み上げ形状の複雑化、降雨による含水率の変化が発生します。
この結果、月末の棚卸し時に「だいたいこれくらいの高さだから、〇〇トンだろう」という目視概算を行わざるを得ず、 半期決算や年次決算で初めて「数千万円分の在庫差異(ロス)」が発覚するケースが後を絶ちません。
3D計測(ドローン/LiDAR)が選ばれる理由
この課題に対し、急速に普及しているのが「3D点群計測」です。 レーザーや写真測量を用いて、対象物の表面形状を無数の点の集合(点群)として捉えます。
- 安全性:危険なチップ山に登る必要がない。
- 速度:広大なヤードでも数十分〜半日で計測完了。
- 証跡:「なんとなく」の数値ではなく、3Dデータとしてエビデンスが残る。
屋外ヤード:ドローン測量による面的な把握
広大なヤードを数十分でスキャンする
屋外のストックヤードには、ドローン(UAV)を用いた写真測量またはレーザー測量が最適です。 予め設定した飛行ルートを自動航行し、上空からヤード全体を撮影します。
取得したデータを解析ソフト(SFM処理など)にかけることで、センチメートル単位の精度を持つ「3D地形モデル」が生成されます。 これにより、複雑な凹凸を持つチップの山(パイル)であっても、正確な「体積(m3)」を算出可能です。
不整形な山(パイル)の体積算出ロジック
体積算出には、主に「基準面方式」を用います。 ヤードの舗装面(GL)を基準面(ゼロ)として設定し、そこから盛り上がっている部分の体積を積分します。 古いチップの上に新しいチップを積んでいる場合でも、前回の計測データとの差分を取ることで、 「今月入荷分」の形状のみを抽出することも可能です。
屋内・サイロ:LiDAR・SLAMによる閉鎖空間計測
GPSの届かない倉庫内での計測手法
屋内保管庫や大型サイロ、ドーム型倉庫では、ドローンのGPSが効かないため、 「地上型レーザースキャナ(TLS)」や「手持ち型スキャナ(SLAM)」を使用します。
特にハンディタイプのSLAMスキャナであれば、担当者がチップ山の周囲を歩くだけで、リアルタイムに3D形状を取得できます。 キャットウォークからの計測や、入り口付近からの照射で、人が立ち入れないエリアの形状も捉えることができます。
サイロ内部の「安息角」と「死角」の扱い
サイロ内部では、投入口と排出口の関係で、チップが複雑な「漏斗(じょうご)状」や「偏った山」の形状になります。 従来のレベル計(1点計測)では、この偏りを検知できず、在庫量を誤認する主原因となっていました。 3Dスキャンであれば、この偏りをそのまま形状として捉えるため、タンク内の空隙率を正確に評価できます。
最重要:体積(m3)から重量(t)への換算係数
3D計測で得られるのは「体積(Volume)」までです。
在庫管理(B/S)に必要な「重量(Weight)」を導くには、以下の式が重要になります。
在庫重量(t) = 計測体積(m3) × かさ比重(t/m3) × 締固め率
「かさ比重」と「締固め率」の現実的な設定
ここがノウハウの分かれ目です。木質チップの樹種(針葉樹/広葉樹)や形状によって、基本となる「かさ比重」は異なります。 また、重機で踏み固められた下層部と、ふわっと積まれた上層部では密度が全く異なります。
当社では、初回導入時に「既知の重量(トラック入荷量など)」と「3D計測体積」を突き合わせるキャリブレーション(補正)を行い、 お客様の現場専用の「換算係数」を算出するサポートを行っています。 一度この係数を定めてしまえば、以降はスキャンするだけで高精度な重量管理が可能になります。
含水率による変動をどう考慮するか
屋外ヤードの場合、降雨によりチップが水分を含み、重量が増加します(体積はほぼ変わりません)。 より厳密な管理を行う場合は、サンプリングによる含水率測定を併用し、 「絶乾重量(BDt)」と「湿重量(Wt)」のどちらで管理するかを明確にする必要があります。
導入事例とコスト対効果
事例1:製紙工場(屋外ヤード)
課題:広大なヤードの棚卸しに作業員3名で丸1日かかっており、数値も不安定だった。
解決:ドローン写真測量を導入。
効果:計測時間は飛行20分+解析半日に短縮。危険な山登り作業がゼロになり、在庫差異の原因が「積み上げ方のムラ」にあることを特定できた。
事例2:バイオマス発電所(燃料管理)
課題:PKSの在庫量がレベル計と合わず、燃料切れのリスクに直面していた。
解決:屋内用SLAMスキャナによる週次計測。
効果:サイロ内の「死角」にある在庫を正確に把握。投入計画の精度が向上し、過剰在庫を持つ必要がなくなった。
よくある質問(FAQ)
在庫管理の適正化をご支援します
「今の在庫計測方法で合っているか不安」「まずは一度、実測して誤差を確認したい」
そのような段階からでもお気軽にご相談ください。
現場の状況(屋外/屋内、面積、頻度)に合わせ、最適な計測手法と係数設定をご提案します。

