この記事で分かること

本記事は、測量会社・建設コンサルの内業担当/技術責任者の方を主な読者として想定しています。読み進めることで、次のポイントが整理できます。

  • 現場が高速化するほど内業側で発生する点群データ処理の渋滞構造が把握できる
  • どの作業を社内で持ち、どこからを外注(内業切り出し)の候補にすべきか判断の軸が得られる
  • 外注先と連携しても品質とトレーサビリティを担保できるワークフローの組み立て方が分かる
  • 内業を切り出すことで、測量士・技術者をより付加価値の高い業務にシフトさせるイメージを持てる

要点:点群データ処理「内業渋滞」の正体と影響

現場は高速化したのに内業だけが詰まる理由

UAV(ドローン)や地上型レーザースキャナの普及により、数年前と比べて現場測量の生産性は大きく向上しました。以前なら数日かかっていた範囲を、半日〜1日で計測できるケースも珍しくありません。

その一方で、現場から持ち帰る点群データは桁違いのボリュームになっています。数億〜数十億点規模の点群は当たり前で、それらに対して ノイズ除去・レジストレーション・座標変換・図化・モデリング を従来と同じ、あるいはそれ以上に短い納期でこなす必要があります。

結果として、 「現場の処理速度 > 内業の処理能力」 となり、内業部門側だけが慢性的なボトルネックになってしまう──これが多くの測量会社で起こっている「内業渋滞」の実態です。

点群データの増大が引き起こす遅延のメカニズム

内業渋滞は、単に「忙しい」という一言で片付けられるものではありません。構造的には、次のような要因が複合しています。

  1. 高性能PC・ソフトウェアへの依存度の増大: 大容量点群を扱うには、GPU 搭載の高性能ワークステーションと専用ソフトが必須です。台数・ライセンスが限られると、そこが「待ち行列」の起点になります。
  2. 点群処理人材の不足: 点群から地形や構造物を読み解き、設計に使える図面・データへ落とし込める技術者は多くありません。限られた人員に作業が集中し、スケジュールがすぐに飽和します。
  3. 属人化による品質ばらつき: 「Aさんが触ると早くてきれいだが、Bさんだと時間が読めない」といった状態が続くと、標準化ができず、チェック・修正のコストが増加します。
  4. 納期遅延が連鎖するリスク: 一つの案件の遅れが他案件の着手を後ろ倒しにし、最終的には元請・発注者からの信頼を損ないかねません。

この構造的な遅延を解消する一つの有効な手段が、点群処理や図化といった内業作業を、経験豊富な外部パートナーへ計画的に切り出すことです。


内業渋滞を解きほぐす「点群処理の切り出し」戦略

外注で解消できる3つのボトルネック(時間・技術・コスト)

点群データ処理の外注は、「人が足りないからお願いする」だけの話ではありません。戦略的に見ると、次の3つのボトルネックを同時に緩和できます。

  • 時間ボトルネック: 繁忙期に一気に案件が集中すると、自社内だけではどうしても処理が遅延します。外注パートナーを使うことで、ピーク時だけ処理能力を増強し、案件の山を平準化できます。
  • 技術ボトルネック: 配管アイソメ、工場BIM、文化財の高LODモデルなど、 「自社の得意分野から少し外れる」 タスクだけを切り出す、といった使い方も有効です。
  • コストボトルネック: ハイスペック PC・ソフトウェア・人材育成をすべて自前でまかなうと固定費が膨らみます。外注によって、一部を案件ごとの変動費に置き換えることができます。

切り出し対象にしやすい具体的な点群処理タスク

実務的に「ここから先は外に出しても問題になりにくい」という境界線は、次のような作業群です。

点群前処理から図化・モデリングまでの内業フローと切り出しポイントのイメージ
  • 点群の前処理: ノイズ除去、不要物(車両・人・植栽など)の削除、複数スキャンの結合(レジストレーション)、座標系の調整など。
  • 図化・モデリング:
    • 2D CAD 図面(平面図・縦横断図・立面図など)へのトレース
    • 地形メッシュやサーフェスモデルの作成
    • BIM/CIM モデル化(配管・架台・構造物・設備オブジェクトなど)
  • 各種解析のための基礎データ作成: 土量計算に用いる TIN/GRID 作成、スラブ不陸解析用の高さデータ生成、変位解析の基準面作成など。

一方で、発注者との協議・成果物仕様の擦り合わせ・最終 QC といった「判断を伴う工程」は、基本的に自社側に残しておくのが現実的です。


高品質・短納期を両立させる外注ワークフロー構築ステップ

「とりあえず外注してみる」だけでは、かえって手戻りが増え、内業渋滞が悪化することすらあります。ここでは、外注パートナーと一体になって成果を出すためのステップを整理します。

ステップ1:点群取得と指示内容の標準化

まずは、外注に回す前提となる「インプット」を整えることが重要です。具体的には、次のようなポイントを標準化しておきます。

  • ファイル形式・座標系のルール化: 点群の形式(LAS/E57/RCP など)、座標系(公共座標・ローカル座標)をプロジェクトごとに明文化し、必要な変換の有無を指示書に記載します。
  • 図化レベル(LOD)の明確化: どの要素をどこまで表現するか(例:配管は芯のみ/外径まで・バルブやフランジは表現する/しない 等)を仕様書として整理し、毎回同じ基準で依頼できるようにします。
  • 精度・検査情報の共有: 基準点・検測結果・期待する精度(例えば ±◯mm)をまとめた資料を添付することで、外注先側でも品質をイメージしやすくなります。

ステップ2:外注パートナー選定と初期トライアル

外注先は「人手不足を埋める相手」ではなく、自社内業部門の拡張チームとして位置付けます。そのために、次のような初期連携が有効です。

  • 小さめの試行案件から始める: いきなり大規模案件を丸投げするのではなく、スコープを絞った案件で、品質・納期・コミュニケーションを確認します。
  • 窓口担当者の固定: 自社/外注先ともに、技術的な質問を受ける窓口を固定し、チャット・Web 会議などの連絡手段をあらかじめ決めておきます。
  • フィードバックのサイクル設計: 初期案件では、納品後に必ずレビューの時間を取り、「どこが良くて何を直すべきか」を双方で共有します。ここで仕様書・チェックシートをブラッシュアップすると、その後の手戻りが大きく減ります。
測量会社と外注パートナーが連携する点群処理ワークフローのイメージ(依頼 → 処理 → QC → 納品)

ステップ3:QCフローとレビュー体制の組み込み

最終的な成果物に責任を持つのはあくまで自社です。そのため、外注を使いつつも品質を担保するための QC フローを組み込みます。

  • 重要寸法・断面の重点チェック: すべてを細かく確認するのではなく、「工事・設計に効く部分」を中心に、図面寸法と点群を突き合わせて確認します。
  • 共通チェックシートの活用: レイヤー構成、属性項目、ファイル構成、命名ルールなどを一覧化したチェックシートを自社・外注先で共有し、同じ目線で品質を確認します。
  • 点群へのオーバーレイレビュー: CAD/BIM モデルを点群上に重ねて表示し、干渉やズレを視覚的にチェックします。微妙なバイアスも検知しやすくなります。

失敗しない外注パートナー選びのチェックポイント

点群データ処理を請け負う事業者は増えていますが、レベルはさまざまです。ここでは、測量会社が見るべきポイントを 4 つに絞って整理します。

点群処理スキル・対応ソフト・データ形式の見極め

単なる CAD オペレーションだけでなく、 点群処理ソフトへの習熟度・実績 を確認します。ReCap・Cyclone・TBC・InfraWorks など、どのツールに対応しているか、SfM ベースの点群と TLS 点群の違いを理解しているかが重要です。

また、BIM/CIM モデルや属性付きデータの作成経験があるかどうかは、将来的な活用を見据えたときに大きな差になります。

セキュリティ・NDAと情報管理レベルの確認

点群には、構造物・インフラ・工場内部など、機微性の高い情報が含まれます。 情報セキュリティの体制 が明確でない外注先にデータを預けるべきではありません。

データ転送方法の暗号化、保管先サーバーの管理方針、アクセス権の管理、作業完了後のデータ削除ポリシーなどについて、事前に具体的な説明を求めましょう。NDA(機密保持契約)の締結は必須です。

納期・キャパシティと「手戻り」抑制のコミュニケーション

「早いが品質が不安定」または「品質は良いが連絡が遅い」といった相手では、かえって管理コストが増えてしまいます。重要なのは、 疑問点をすぐに確認し合えるコミュニケーションの頻度とレスポンスです。

また、納品後の修正対応の範囲・リードタイムについても事前に取り決めておくことで、手戻りによるスケジュールのブレを抑えることができます。

実績と組織体制(継続運用できるか)

一人スキルに依存した体制では、担当者の退職や繁忙で一気に品質が揺らぎます。 複数メンバーでの QC 体制や教育体制 があるかどうか、案件規模に応じてキャパシティを増減できるかも、継続的なパートナーシップを築くうえで重要です。


外注がもたらすコスト・工期・品質へのインパクト

内業の外注は「余計なコスト」と見られがちですが、中長期で見ると利益率と競争力の向上につながる投資です。

内業コストの変動費化と人材の再配置

点群処理・図化を一部切り出すことで、これまでワークステーションやソフトウェアライセンス、人件費として抱えていた 固定費の一部を変動費に置き換える ことができます。

特に、測量士・技術士など単価の高い人材が、トレースや単純なフィルタリングに多くの時間を使っている場合、それらを外に出すことで、 顧客折衝・高度な解析・提案業務 へとシフトできます。結果として、同じ人数でも売上・利益の獲得余地が広がります。

納品リードタイム短縮と受注機会の拡大

内業渋滞が解消されると、現場計測から納品までのリードタイムを安定して短縮できます。例えば、これまで 2 週間かかっていた図化工程を、外注と連携することで 1 週間程度まで圧縮できれば、 「短納期対応」自体を差別化要素 として前面に出すことも可能です。

加えて、内業キャパシティに余裕が生まれると、「案件は取りたいが内業が詰まりそうなので見送る」といった機会損失も減らせます。


点群処理の内業を切り出した活用事例

事例1:道路・インフラ測量での大規模データ処理の平準化

業種:建設コンサルタント
課題:広範囲の道路改良プロジェクトで UAV-LiDAR による数十kmの路線を一括計測。数TB 規模の点群が短期間で内業へ流入し、従来の処理フローではレジストレーション・フィルタリング・メッシュ作成が間に合わず、設計工程の着手が後ろ倒しになっていた。
対応:自社では基準点計算と粗レジストレーションまでを実施し、その後のフィルタリング・地形メッシュ作成・構造物の図化を外注パートナーへ切り出し。仕様書とチェックシートを共有して、複数区間を並列処理できるようにした。
効果:内業リードタイムを約 60% まで短縮。自社技術者は、外注から戻った成果を基にした設計・解析に集中でき、最終的にプロジェクト全体の工程を圧縮できた。

事例2:文化財・歴史的建造物の高精細図化プロジェクト

業種:専門測量会社
課題:歴史的建造物の保存プロジェクトで、複雑な装飾や曲面を含む高密度点群を取得。細部まで忠実に図化する必要があったが、社内に高精細 3D モデリングの経験者が限られており、1 件の案件が長期間内業リソースを占有していた。
対応:図化範囲をエリアごとに分割し、LOD(表現レベル)を明確にした仕様書を作成。高精細モデリングを得意とする外注パートナーに 3D モデル化と一部 2D 図化を依頼し、自社は現地調査・寸法確認・最終 QC に集中した。
効果:限られた社内の熟練者を、別案件の提案・検討業務にも回せるようになり、図面の均質性と表現レベルも向上。発注者からの評価も高まった。

事例3:工場・プラント配管点群からのアイソメ作成

業種:設備設計・施工会社
課題:既設プラントの配管更新工事で、既存図面が欠落・不整合だらけ。レーザースキャナで配管系統を一括計測したものの、点群からアイソメ図面を起こすノウハウが社内にほとんどなく、更新計画の検討が進まなかった。
対応:対象系統・口径・流体などを整理した指示書と点群データ・現場写真をセットで外注。外注側で配管芯線・外径・継手・バルブを抽出し、アイソメ図面や BIM モデルとして整備。自社ではそれをベースに更新ルート・停止時間の検討を行った。
効果:事前の干渉確認精度が向上し、現場での想定外の手戻りが大幅に減少。停止時間の見積り精度も上がり、発注者との調整もスムーズになった。


よくある質問(FAQ)

Q. 点群データを外部に渡す際のセキュリティが不安です。

A. 東海エアサービスでは、全スタッフとの機密保持契約(NDA)を前提とし、暗号化通信によるデータ授受、アクセス権限を限定したストレージ運用、作業完了後のデータ消去ルールを徹底しています。ご契約前に、情報セキュリティポリシーや運用体制について詳細にご説明し、お客様の要求水準に合致するかを一緒に確認させていただきます。

Q. 点群処理を外注すると、自社の技術力が落ちてしまいませんか?

A. 外注は技術を手放すことではなく、限られた技術者をより価値の高い仕事に集中させるための手段と考えています。トレースや単純な前処理を切り出す一方で、設計方針の検討や解析、最終 QC は社内で担っていただくことで、むしろ技術者が「判断・提案」を行う時間を増やすことができます。

Q. 繁忙期の急ぎ案件だけ、スポットでお願いすることは可能ですか?

A. はい、スポットでのご依頼にも対応しています。短納期・大量処理が必要なタイミングで、既存フローに組み込めるような形でご利用いただくケースが多くあります。案件規模やご希望納期をヒアリングしたうえで、現実的なスケジュールと切り出し範囲をご提案します。


東海エアサービスへのご相談・お問い合わせ

点群計測から処理・図化・解析、BIM/CIM モデリングまで、東海エアサービスは一連のワークフローを日常的に扱っています。 「データはあるがどう活かすべきか分からない」「とにかく内業の山を崩したい」といった段階からでも、お気軽にご相談ください。

要件が固まっていない状態でも構いません。現場条件・納期・ご予算・社内リソース状況を踏まえ、 どの範囲を切り出すと最も効果が出やすいか から一緒に整理していきます。

お問い合わせ窓口

点群処理の内業切り出し、BIM/CIM モデリング、解析レポートのアウトソースなど、まずは簡単なご相談から承ります。

東海エアサービス株式会社(Tokaiair Service Co., Ltd.)

測量・建設 DX の専門家として、点群計測、モデル化、解析レポート作成までをワンストップで支援。特に、大規模点群データの高速処理と、現場で使える図面・データへの落とし込みに強みを持っています。