Operation台数を“増やさず回す”技
台数を“増やさず回す”技
—— 積込サイクル×ルート×待機時間の数理
増車の前に、1台あたりのサイクルタイム短縮とばらつき抑制で処理量を押し上げる。現場で効く式・指標・手立てをまとめました。
Formulas
まずは式で見る:処理量と必要台数
1) 台数が決まっているときの処理量
1台あたりの積載量を Q(m³/台)、サイクルタイム(往復+待ち含む)を T(h)、稼働台数を N とすると、理論処理量は
処理量(m³/h) = N × Q ÷ T
ばらつき(遅延)があるほど実績は下振れ。Tの平均だけでなく標準偏差も見るのがコツ。
2) 必要台数
目標処理量を P(m³/h) とすると、必要台数は
Nreq = ceil( P × T ÷ Q )
よってTを削る(=サイクル短縮)かQを増やす(=積載効率向上)で、増車なしに達成しやすくなる。
サイクル分解
サイクルタイム T は次の和で捉えます。
T = Tload(積込) + Thaul(往路) + Tdump(荷下ろし) + Treturn(復路) + W(待機)
積込能力ルート距離/速度処分場の受入能力待機のばらつき
Playbook
どこを削る?現場で効く8つの手当て
積込(Tload)
- バックホウのスイング短縮(積込位置の最適化・待避導線の明確化)
- 山の“ならし”で一杯目の掬い取りを安定化
- 計量・計測の段取り並行化(計量票の前渡し、ICカード運用)
運搬(Thaul・Treturn)
- 重量車ルート+時間帯の最適化(登り勾配・信号密度・通学時間)
- 左折優先ルート/右折回避で平均速度の底上げ
- 車種選定の見直し(2t/4t/10t の実効容積)
荷下ろし(Tdump)
- バック車線・旋回スペースの明確化と誘導配置
- 受入側の計量→荷下ろし→退場の動線分離
待機(W)
- 搬入スロット予約(時間窓)でピーク平準化
- “呼び出し”方式(現場⇔車両のコール)で滞留削減
- 搬出動線の詰みポイントを事前除去
Example
例題:増車せずに処理量を20%上げる
前提: 10tダンプ(実効6 m³/台)× 6台、片道15km、現状サイクルT=1.2h、処理量 = 6台 × 6 / 1.2 = 30 m³/h
| 施策 | 効果 | Tの変化 | 新処理量 |
|---|---|---|---|
| 受入側の時間窓予約+コール運用 | 待機Wを12分→6分 | 1.2h → 1.1h | 6×6/1.1 = 32.7 m³/h(+9%) |
| 右折回避ルートへ変更 | 往復平均速度↑(+8%) | 1.1h → 1.02h | 6×6/1.02 = 35.3 m³/h(+18%) |
| 積込位置の最適化 | Tload 3分短縮 | 1.02h → 0.96h | 6×6/0.96 = 37.5 m³/h(+25%) |
実測に基づく前提と、丸めルールの共有が肝。計算機で数値を置き換えて検証してください。
Checklist
“増車の前に”埋めたいチェック
数値の見える化
- Q(実効容積)を合意済みか
- Tの構成要素を分解し、W(待機)とTloadの実績を取れているか
- 平均だけでなく、標準偏差(ばらつき)を見ているか
現場オペの手当て
- 受入側と時間窓の取り決め/“呼び出し”運用
- 動線の分離(積込・退避・計量・退場)
- 右折回避・登り勾配回避ルートの検討
