土量計算の誤差を極限まで抑える【公共工事・大規模造成向け】点群計測×BIM/CIM土量管理ワークフロー
公共工事や大規模造成で扱う土量は、わずかな誤差でも残土処理費や土砂手配費として数千万円〜億単位のインパクトを生みます。それにもかかわらず、従来のメッシュ法・断面積法では、地形の複雑さや測量頻度の制約から、「ある程度の誤差」は避けられない前提として扱われてきました。
本記事では、UAV(ドローン)レーザーおよび地上型レーザースキャナー(TLS)による点群計測を土量管理の基盤とし、BIM/CIMモデルと組み合わせることで、積算段階から出来形・進捗管理まで一貫して「ブレを見える化・最小化」するための実務的なワークフローを、ゼネコンのプロマネ・技術担当者向けに整理して解説します。
この記事で分かること:土量管理の課題解決ロードマップ
本稿は、特に「土量計算の精度不足が原因で、予算超過や工期遅延が発生している」という課題をお持ちのゼネコンの積算・土木担当者の方を主な読者として想定しています。読み進めることで、次のようなポイントを体系的に把握できます。
- リスクの見える化: 従来の土量計算で埋もれていた「誤差」が、実行予算・利益・工期にどの程度波及するのかを定量的にイメージできる。
- 技術選定の判断軸: 現場条件や対象規模に応じて、UAV-LiDARと地上型レーザースキャナー(TLS)をどう使い分けるべきかが分かる。
- 再現性のあるワークフロー: 点群データからTINモデルを生成し、BIM/CIMモデルと連携させて土量計算を行う具体的な4ステップの流れを把握できる。
- 品質確保の勘所: ノイズ処理や計算範囲の設定など、計算結果の信頼性を左右するチェックポイントを事前に押さえられる。
要点:土量計算のブレがプロジェクトにもたらす致命的リスク
大規模な造成工事やインフラ整備では、土量は実行予算の中でも特に金額インパクトの大きい項目です。しかし現場では、設計図面と実際の地形のズレ、測量頻度の限界、急峻な法面や複雑地形での計測誤差などが重なり、積算時に想定した土量と出来高土量が大きく乖離するケースが後を絶ちません。
この乖離は、残土処理や追加掘削のコスト増加、工程の組み直し、さらには発注者との調整コストとして跳ね返り、プロジェクト全体の利益率と信頼性をじわじわと削っていきます。現場感覚で「多少のズレは仕方ない」と見過ごしてきた領域を、デジタルでコントロール可能な範囲に引き戻すことが、建設DXの重要なテーマのひとつです。
積算・実行予算で許容される「誤差」の正体
土量の積算は、多くの場合、設計図面(DMデータや等高線)と現況測量の情報を組み合わせて行われます。ところが、設計図面の元になった測量から時間が経っていたり、現況測量の測点やメッシュ間隔が粗い場合、地形の細かな起伏や勾配変化が十分に反映されません。その結果、生まれてくる値は、あくまで「近似値」にとどまります。
特に、切盛境界(ゼロ工区)付近や、折れ点の多い法面、谷筋・尾根筋が入り組んだエリアでは、この近似が蓄積し、最終的な残土量・不足土量として数%〜十数%単位のズレとなって現れることがあります。扱う土量が数万m³規模であれば、そのズレは即座に億単位のコストインパクトへと変換されます。
従来の測量・計算プロセスにおける手戻りの発生ポイント
光波測量やGPS/GNSS測量に代表される従来手法は、「点」を拾っていく計測が中心です。この前提のまま土量管理を行うと、次のような手戻りリスクを内包することになります。
- 計測密度の不足: 測点の間を補間して作られたTINやメッシュは、実際の地形の細部までは再現しきれず、計算結果にバイアスが生じやすい。
- 出来形確認の頻度制約: 測量そのものに時間と人手がかかるため、週次・月次といった高頻度で現況を追いかけるのが難しく、手戻りの発見が遅れがちになる。
- 目視判断への依存: 設計図面と現場写真、断面図を並べて「目視で差分を見る」プロセスが多く残り、人に依存した判断や見落としが発生しやすい。
なぜ「点群計測」が土量管理の最適解なのか
土量計算の精度を根本から高めるためのキーワードは、部分的なサンプリングではなく「全量を高密度に計る」ことです。レーザースキャナーやLiDARを搭載したUAVを用いる点群計測は、数百万〜数億点の3次元座標を短時間で取得し、地形の凹凸から構造物、植生まで現況を丸ごとデジタル空間に再現します。
この「現場のフルスキャン」を出発点にすることで、従来の測量では不可能だったレベルの土量計算精度と、出来形管理のタイムリーさを同時に実現できます。
ドローン(UAV)と地上型スキャナーの使い分けと適用範囲
UAVレーザー(LiDAR)
- 適用: 大規模造成地、メガソーラー、ダムや堤体、広域の切盛土エリアなど、上空からの一括計測が有効な現場。
- 特長: 広範囲を短時間でカバーできるため、進捗管理にも向く。植生や一時的な障害物はフィルター処理を前提に、広域の土量を効率よく把握できる。
- 精度: 高さ方向で数cm〜数10cm程度。全体量の把握と傾向の把握に非常に有効。
地上型レーザースキャナー(TLS)
- 適用: 残土ヤードや仮置き場、構造物近傍の掘削、地下ピットやボックスカルバート内など、詳細形状を捉えたい局所エリア。
- 特長: 高密度かつ高精度な点群を取得でき、構造物に近接した範囲でも安全に計測可能。複雑形状の体積算出に威力を発揮する。
- 精度: 数mm〜数cmレベルで、局部的なボリューム計算や出来形検査に適している。
点群データによる高密度・高頻度な出来形管理
点群計測は、測点やメッシュ間隔に依存するのではなく、現場の「面」をほぼすべてカバーする計測です。このため、そこから生成されるTIN(不整地三角形網)は、現況地形をほぼそのまま連続曲面として再現できます。
- 計算精度の底上げ: TINに基づくボリューム計算は、メッシュ法や断面積法に比べ、地形の複雑さに強く、局所的な凹凸も織り込んだ土量算出が可能です。
- 高頻度の現況把握: UAVを活用すれば、週次・月次での定期計測も現実的な工数に収まります。工程ごとに現況TINをアップデートし続けることで、「どこで」「どのくらい」計画との差が出ているかを早期に検知できます。
【ワークフロー】点群データによる土量計算の精度を最大化する4ステップ
ここからは、点群計測を起点にBIM/CIMモデルと連携し、土量計算の精度と説明責任を高めるための標準的な4ステップの流れを紹介します。このワークフローをテンプレート化しておくことで、案件ごとの属人性を抑え、再現性のある運用が可能になります。
ステップ1:基準点測量と点群データの取得(TLS/UAV-LiDAR)
まず、土量計算の「物差し」となる基準点を高精度に整備します。GNSS測量機やトータルステーションを用い、プロジェクトで採用する座標系に沿って基準点を設置・検証します。この工程が甘いと、後段の点群全体が一括してズレることになり、どれだけ高密度に計測しても意味が薄れてしまいます。
使用する計測機材は、対象エリアや安全条件に応じて選定します。広域の造成地であればUAV-LiDARを中心に、構造物近傍や危険箇所の詳細把握にはTLSを併用する、といった組み合わせが一般的です。また、土量計算の対象にならない仮設構造物や一時的な水たまりなどが極力写り込まないよう、施工ステップと計測タイミングを調整しておくと、後工程のフィルタリング負荷を抑えられます。
図:基準点配置とUAV-LiDAR・TLSを組み合わせた点群取得イメージ
ステップ2:点群のフィルター処理とTINモデル(不整地三角形網)の生成
取得した点群そのものには、車両・重機・作業員・植生・仮設ヤードなど、土量計算の対象外となる要素が多数含まれています。これらを適切に分類・除去し、純粋な地盤表面のみを抽出することが、計算精度を担保するうえでの最重要ポイントです。
TerraScanやCloudCompareなどの専用ツールを用いて点群の分類処理を行い、地表面点群を抽出します。そのうえで、Civil 3D や Terrasolid などのCIM/BIM対応ソフトウェアでTIN(不整地三角形網)を生成します。TINは、抽出した点ひとつひとつを頂点に持つ三角形の集合であり、現況地形を高い忠実度で表現できます。土量は、この現況TINと計画TINとの体積差として算出します。
ステップ3:BIM/CIMモデルでの切土・盛土計画のシミュレーション
ステップ2で生成した現況TINを、計画段階で作成されたBIM/CIM地盤モデルに重ね合わせます。これにより、「どこを」「どの程度」切るのか・盛るのかを、3D上で視覚的かつ定量的に把握することができます。
- 干渉・差異の見える化: 現況と計画の差分を色分けヒートマップなどで表示し、ゼロ工区や構造物の基礎付近など、誤差が許されないエリアを重点的に確認します。
- 土量計算の実行: 計画地盤のTINを基準面として、現況TINとの差を体積として計算。切土量・盛土量・残土量/不足土量を算出し、土砂の搬入・搬出計画の根拠とします。
ステップ4:計算結果の検証と納品(CIMガイドラインとの整合性)
算出した土量は、発注者や元請けへの報告資料・成果品として提出することになります。公共工事の場合、国土交通省のCIMガイドラインに沿った形式・内容になっているかどうかが重要です。
一般的には、次のようなデータセットをパッケージとして納品することで、透明性と再現性を確保できます。
- 点群データ(LAS/PLYなど): 生データと、フィルター処理後の地盤点群の両方。
- TINモデルデータ: 現況TIN・計画TINをLandXMLやDWG形式などで提供し、発注者側でも再計算・検証可能な状態とする。
- 差異分析レポート: 差分ヒートマップや断面図、特定エリアごとのボリューム一覧など、意思決定に必要な粒度で整理した資料。
計算精度に直結する「TIN生成」における落とし穴とチェックポイント
点群計測自体は非常に高精度ですが、その後の処理が適切でなければ、土量計算の結果は簡単にブレてしまいます。特に、TIN生成の考え方を誤ると、植生やノイズ、計算範囲外の外挿などによって、切土・盛土量を過大・過小評価してしまうリスクがあります。
植生・一時的な障害物ノイズの除去:フィルター処理の重要性
落とし穴: 植生や仮設物を十分に除去していない点群からTINを作成すると、本来の地盤面より高い位置で三角形が張られてしまい、切土量が過大・盛土量が過小に算出されます。
チェックポイント: 点群分類アルゴリズムを活用し、樹木・建築物・重機・車両・仮設構造物などを確実に分離したうえで、地盤点群のみでTINを構築しているかを確認します。必要に応じて、代表断面を目視で確認し、分類の妥当性を検証します。
計算範囲外の「ハル点」処理と計算ボリュームの定義
落とし穴: 点群の外周部では、データが存在しない領域に向かって三角形が外挿される「ハル点」が生じます。このまま土量計算を行うと、敷地外まで含めた不自然なボリュームが加算され、土量が過大評価されることがあります。
チェックポイント: 計算対象エリアをポリラインなどで明確に囲み、その内側のみをボリューム計算の対象とします。不自然に長い三角形や敷地外に伸びるハル点は、手動・半自動で削除・補正し、実際の工事範囲に即したTINとしてから土量計算を行うことが重要です。
コスト・工期・品質へのインパクト:机上計画から現場の生産性へ
点群とBIM/CIMを組み合わせた土量管理は、「精度が上がる」という技術的メリットだけでなく、現場の意思決定スピードや生産性に直結します。具体的には、次のような効果が期待できます。
- コストインパクト: 計画と実績の差異を早い段階で把握することで、残土処理や追加土砂手配のコスト膨張を抑制できます。手戻りにかかる重機稼働・人件費が20〜30%程度削減されたケースも珍しくありません。
- 工期インパクト: 高頻度の出来形計測と差異分析により、進捗の遅れや局所的なボトルネックを早期に可視化できます。造成工程のリスケや重機配置の最適化を前倒しで打てるため、全体工期の遵守に寄与します。
- 品質インパクト: 設計BIM/CIMモデルと実測点群の比較により、法面勾配や仕上がり高さが設計通りかどうかを客観的に確認できます。従来の「感覚的な確認」から一歩進んだ、デジタルな品質保証が可能になります。
土量計算のデジタル化を推進した活用事例
大規模太陽光発電(メガソーラー)サイトの造成管理
課題: 丘陵地に展開する約50haのメガソーラー造成工事。従来の測量では、進捗確認と土量把握に多大な時間と人員を要し、切盛計画の見直しや土砂手配の意思決定が常に後手に回っていた。
対応: 月2回のペースでUAV-LiDARによる点群計測を実施し、各工程ごとに現況TINを更新。計画地盤モデルとのボリューム差分を自動計算し、BIM/CIMデータとして現場・本社で共有できるようにした。
改善: 土量計算作業にかかる時間が従来比で約1/5に短縮。遅れが生じている区画を早期に特定し、重機・人員の再配置を実施することで、最終的には計画工期内で竣工。残土量も計画値の範囲に収まり、追加コストを抑制できた。
インフラ更新工事における旧構造物撤去土量算出
課題: 橋梁・トンネル・ボックスカルバートなどの更新工事で、旧構造物撤去後の掘削土量や、特定廃棄物を含む土砂の体積を高い精度で把握する必要があった。狭隘箇所が多く、従来測量では安全確保と精度確保の両立が難しかった。
対応: 撤去後の掘削エリアをTLSで高密度に計測し、複雑な形状の掘削面を点群として取得。そこからTINモデルを生成し、計画断面との体積差を算出することで、撤去土量や廃棄物の体積を具体的な数値として提示した。
改善: 推定ベースに頼っていた従来の計算に比べ、発注者に対して説得力のあるエビデンスを示すことができ、廃棄物処理費の精算がスムーズに進行。元請・下請間の数量認識のズレも抑えられた。
港湾・埋立工事における底面土量の変化計測
課題: 港湾での浚渫・埋立工事において、水底の地形変化を短期間で把握し、土量管理に反映させる必要があった。潮位・波浪などの影響もあり、従来の水中測量だけでは頻度・精度ともに限界があった。
対応: マルチビーム測量で取得した水底点群と、UAVによる水面上の地形データを統合。統合点群から水底TINを構築し、計画底面との体積差を継続的に算出してBIM/CIMモデル上で管理した。
改善: 潮位条件の良いタイミングを選んで集中的に計測・解析を行う運用に切り替えることで、浚渫量・埋立量の過不足を早期に把握。土砂搬入計画や残土処理計画の見直しを前倒しで行えるようになった。
合わせて読みたい:建設DXと高精度計測の関連ガイド
土量計算の精度向上は、建設DXの全体像のなかの一つのピースに過ぎません。点群・BIM/CIMを活用した他のユースケースもあわせて押さえておくことで、社内展開や標準化が進めやすくなります。
- 土量コストの完全ガイド: 土量計算とコスト管理を一体で考えるためのフローや、計測技術の費用対効果を整理しています。
- スラブ不陸3D計測ガイド: 点群を用いたスラブ(床)の不陸計測手法と、仕上がり品質検査への応用例を紹介しています。
- 工場設備・配管更新の停止時間短縮: 工場スキャンから配管アイソメ作図、BIM連携まで、停止時間を最小化するための手法を解説しています。
FAQ:ゼネコン担当者からよく寄せられる質問
Q1: 点群データでの土量計算は、現在のCIMガイドラインに準拠しますか?
A: はい、適切なワークフローを踏めば準拠可能です。国土交通省のCIMガイドラインでは、3次元モデルを成果品として活用することが推奨されており、点群から生成したTINモデルを用いた土量計算もその一環として位置付けられています。重要なのは、LandXMLやCIMモデルなど、ガイドラインで指定された形式・属性を満たした状態で整理・納品することです。当社では、案件ごとに要求仕様を確認し、それに合致したデータセットを作成します。
Q2: 基準点の設置精度や測量機器の精度は、計算結果にどの程度影響しますか?
A: 基準点の精度は、土量計算の「絶対精度」を決める土台です。基準点が数cmずれれば、その分だけ点群全体がシフトし、体積計算結果にも影響します。特に公共工事では、高精度GNSS測量機を用い、公共測量作業規程に準じた基準点測量が求められます。当社では、計測機器の定期校正と、現場での検証観測をセットで行うことで、誤差を最小限に抑えています。
Q3: 計算に必要なデータ(点群、TIN、メッシュ)は、どのソフトウェアで確認できますか?
A: 納品データは、CIM分野で一般的に利用されている形式を基本としています。点群はLAS/PLY形式、TINやメッシュはLandXML/DWG/Civil 3D形式などで提供するため、Civil 3D、TREND-POINT、各種SfMソフトウェアなど、主要なCIM/CADツールでそのまま取り込み・確認していただけます。現場側で再計算・検証できるよう、計算に用いたパラメータや境界線データもセットでお渡し可能です。
高精度な土量管理・BIM/CIM連携は、東海エアサービスにお任せください
「大規模な造成工事で土量計算のブレを抑えたい」「CIMでの3次元データ納品に対応できる測量パートナーを探している」「既に点群データはあるが、TIN化やボリューム計算のノウハウが不足している」──そのような段階でも問題ありません。
東海エアサービス株式会社では、現場経験のある技術者が、計測計画の立案から点群取得・解析、BIM/CIM連携、成果品作成までをワンストップで支援します。要件が固まり切っていない段階からご相談いただければ、手戻りを抑える最適なワークフローを一緒に設計いたします。
東海エアサービス株式会社について
東海エアサービス株式会社は、UAV(ドローン)レーザー測量、地上型レーザースキャナー、写真測量など、最新の3D計測技術を専門とする企業です。建設・土木分野のBIM/CIMデータ活用、工場・プラントの設備保全、文化財・施設のデジタルアーカイブなど、多様な分野で高精度な3次元データソリューションを提供しています。現場の「こうだったらいいのに」を具体的なワークフローとして形にする、技術者集団です。


