RTKかPPKか迷った時に最終的にRTKを選んだ理由

最初はPPKで十分だと思っていた

東海エアサービスを立ち上げた2020年、DJIのRTK対応ドローンが本格普及する前は、ほとんどの現場でPPK(Post-Processed Kinematic)で対応していました。測量業登録後も「精度水平±3cm垂直±5cm」を実現できれば、公共工事の成果品も納品できると考えていたのです。

実際、最初の100件以上の現場ではPPKで対応してきました。コストも安く、納期も短かった。「これで十分」という自信さえありました。

PPKが失敗した現場での悔しさ

転機は、ある大規模な盛土計測現場でした。

天候は良好、GPS衛星も充分に確保できていたはずなのに、事後処理でPPKの計算がうまく収束しないという状況に陥ったのです。理由は、計測現場の周辺に新たに建設中の大型構造物があり、それが微弱なGPS電波を反射・干渉させていたこと。気象条件だけでなく、周辺環境のマルチパス現象まで考慮する必要がありました。

その現場では計測をやり直す羽目になり、顧客に迷惑をかけ、自分たちの信頼も損なわれました。「精度が出ない」という言い訳は通じません。現場の責任者として、その悔しさと責任感は今も覚えています。

RTKという新しい選択肢の出現

その直後、DJI Phantom 4 RTK、そしてMatrice 300 RTKといったRTK対応機が本格的に普及し始めました。

RTK(Real-Time Kinematic)の大きな利点は何か。それは「その場で精度が確認できる」ということです。PPKのように事後処理で精度結果を待つのではなく、飛行中に既に高精度な位置情報を記録できる。電波干渉があった場合も、その場でセンサーが反応し、計測を中止・やり直しできるのです。

RTK導入の判断基準を整理した

私たちがRTKを選ぶ判断基準は、以下のようになりました:

  • 都市部・建設エリア(マルチパス環境):RTK必須。GPS反射が避けられない
  • 精度要件が厳格(±3cm以上):RTK推奨。確実性が違う
  • GPS衛星が弱い地域(山間部・樹林地):PPKで対応、ただしリスク承知
  • 納期が短い現場:RTK優先。事後処理時間が不要
  • 費用が限定的な現場:PPKで交渉、ただしリスク説明必須

RTK導入後の気づき

実際にRTK機を導入してから約3年。218件以上の計測実績を通じて気づいたことがあります:

第一に、RTKはコストではなく投資だということ。高い機材費と通信費がかかりますが、やり直しのリスク、信頼失墜のコスト、納期の短縮を考えると、むしろ安いのです。

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第二に、技術は客との信頼を築く道具だということ。「RTKで対応するので精度は確実です」という説明は、顧客の不安を減らし、商談が前に進みやすくなります。

第三に、電波環境の事前調査が何より大切だということ。RTKでも、基準局との通信が切れれば精度が失われます。現地でのモバイルネットワーク確認、GPS衛星の視界確保は変わりません。

今、PPKを使わないわけではない

ただし、PPKを完全に捨てたわけではありません。山奥の樹林地計測など、RTK通信が不安定な環境ではPPKを選びます。その場合は、顧客に「事後処理のため5日程度の納期が必要」「精度保証は±5cm」と事前に説明し、合意の上で進めます。

技術の選択は、机上の理論ではなく、現場の判断と顧客との信頼の上に成り立つ。PPKとRTKの使い分けは、その学びを体現しているのだと思います。

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