ドローンが「最強」ではない現場
ドローン測量の会社として働いていると、「ドローンで何でも計測できる」と思われることが多いです。
しかし、現実はそうではありません。
ドローンが飛べない、あるいは飛ばしてはいけない環境は、意外と多い。そうした現場で、我々は地上型の3Dスキャナ(RTC360など)に切り替えています。その体験談です。
最初の「ドローンが飛べない現場」
それは、製紙工場の在庫棚卸し現場でした。
顧客は「紙ロール積み上げた在庫の正確な数量・寸法を3Dで把握したい」という依頼。一見すると、ドローンで空撮すれば簡単──そう思いました。
ところが、現地に行ったら「屋内の倉庫」でした。天井高さ15m、奥行き50m。その中に直径1.5mの紙ロールが積み上げられている。
ドローンを飛ばすことは「物理的に不可能」です。プロペラが壁や棚に接触するリスク、それに加えて「屋内でのGPS喪失による制御不能」のリスク。
そこで初めて、「ドローンの限界」を肌で感じました。
RTC360との出会い
その現場で使用したのが、Leica RTC360という地上型レーザースキャナです。
三脚の上に据えて、その位置から360度全方位をレーザーで走査する装置です。一度の計測で、その点からの全方位データを得られます。
紙ロール倉庫は、複数の位置からRTC360を据え置き、各位置で走査。その後、スキャナ間のデータを位置合わせして、全体の3Dモデルを構築します。
結果、紙ロール1本ずつの寸法(直径・長さ)、積層パターン、隙間まで正確に把握できました。在庫数は「目視推定値:850本」→「3D計測値:847本」。誤差3本で、顧客も大満足です。
RTC360の強みと限界
地上型スキャナの強みを、この現場から学びました:
強み1:屋内対応
GPS不要。光学的に周囲を走査するので、トンネル内、地下施設、建物内、どこでも計測できます。
強み2:高精度・高密度
一箇所からの走査で、数百万点の点群を取得。ドローン計測では到達できない密度と精度を得られます。特に小さなディテール(ねじ穴、テクスチャの凹凸)まで捉えられる。
強み3:安全性
危険な高所や、立ち入り禁止エリアに近づかなくても、離れた位置から遠隔計測できます。
一方、限界も見えました:
限界1:処理時間・データ量
一度の走査で数百万点を取得するため、ファイルサイズが数GBに及びます。処理に数日かかることも。ドローンより時間がかかる。
限界2:広大な屋外は非効率
屋外の広い現場(5ha以上)では、複数箇所からの走査が必要になり、設営・移動・位置合わせの手間が膨大。ドローンなら数時間で完結するのに対し、3〜5日かかることもある。
限界3:機材コスト
RTC360本体で約700万円。ドローン機材よりも高額な場合が多い。
その後の切り替え判断
あれから、RTC360を含む地上型スキャナが活躍する現場が増えました:
- 建設工事の進捗管理:トンネル掘削の断面形状、建物の内部改修状況を精密に記録。毎月の3Dスキャンで、予実のズレを早期発見。
- 既存構造物の測量:古い橋脚、耐震診断対象の建物。複雑な形状を高精度で把握する必要がある場合、スキャナが活躍。
- 機械・プラント配置図:工場内の機械配置、配管ルートを3Dで正確に把握。設計変更や増設時の参考資料に。
- 遺跡測量:地下遺構の掘削状況を、ドローンでは計測できない精度で記録。考古学的価値の保全に。
現在の判断基準:ドローンvs スキャナ
今、我々の現場判断は以下のようになっています:
ドローン(RTK)を選ぶ場合:
- 屋外の広大なエリア(1ha以上)
- 高い視点からの俯瞰視が必要
- 納期が急ぎ(1〜2日)
- 予算が限定的
地上型スキャナ(RTC360)に切り替える場合:
- 屋内、またはドローン飛行禁止エリア
- cm単位の高精度が不可欠
- 複雑な形状の詳細な把握が必要
- 安全上、近づけない場所を計測する必要がある
技術は「武器」に選ばれる
「ドローンしかない会社」と「ドローン+スキャナの会社」では、営業活動の幅が全く違います。
「あの現場はドローンでは無理だから」と断る必要がない。「ドローンか3Dスキャナか、最適な選択ができる」という強みになります。
実績218件以上の中で、この「技術選択の自由度」が、我々の競争力を支えているのだと感じます。