産業施設の維持管理は、竣工後の経年変化をどう把握するかという問いに集約されます。工業団地に建ち並ぶ工場・倉庫・管理棟などは、屋根面積・外壁面積ともに大きく、高所作業や足場設置を伴う従来の目視点検は費用と工期の両面で負担が重くなります。ドローンと赤外線センサー、3Dデータを組み合わせることで、稼働を止めずに広域の現況を短期間で記録できる選択肢が広がっています。
ドローン・赤外線で把握できる項目
可視カメラによる空撮と赤外線(サーモグラフィー)カメラの併用で、以下のような項目の現況記録が可能になります。
| 対象箇所 | 取得データ | 把握できること |
|---|---|---|
| 屋根(防水・折板・FRP等) | 高解像度オルソ・赤外線画像 | 防水層の浮き・ひび割れ・雨水滞留の疑い箇所 |
| 屋根上太陽光パネル | 赤外線画像(ホットスポット) | 発電不良セルの温度異常・配線周辺の熱集中疑い |
| 外壁(金属サイディング・ALC等) | 赤外線画像・可視オルソ | 剥離・浮きの疑い箇所、変形・錆の分布 |
| 高所設備(煙突・タンク外面・排気設備) | 高解像度静止画・動画 | 腐食・変形・塗装剥離の有無 |
| 構内道路・舗装面 | オルソフォト・点群(LAS/LAZ) | 轍・沈下・ひび割れ分布・段差箇所 |
東海エアサービスでは赤外線カメラを搭載したDJI系ドローンを用い、可視と赤外線の画像を同一フライトで取得する運用を基本としています。取得データはTREND-POINTで処理し、LAS・LAZ・DXF・PDFといった形式で納品します。
維持管理への活用局面
ドローン点検のデータは、現場に入る前の「全体像の把握」に特に有効です。従来は目視で手の届く範囲を見て回るしかありませんでしたが、オルソフォトと赤外線画像を重ね合わせることで、どのエリアに優先して専門技術者を入れるかを絞り込みやすくなります。
経年比較の観点でも記録の蓄積が効きます。同じフライトルートで年次または工事前後に撮影しておくと、劣化の進行速度や修繕の効果を画像・点群データで確認できます。修繕計画の策定会議に「面積と分布が把握できるデータ」として提出できるため、優先順位の根拠が明確になりやすくなります。
工業団地での留意点
稼働中の工場敷地内での飛行は、停車中の構内車両・フォークリフト・歩行者との干渉リスクがあります。事前に施設管理者の保安規程を確認し、構内交通の一時停止区画の設定や担当者の立会い体制を整えることが前提になります。
赤外線計測は気象条件への依存が高い手法です。晴天・風が弱く、外壁・屋根面に十分な日射差が生じているタイミングでなければ温度差が出にくく、浮きや剥離の疑い箇所を検出しにくい場合があります。雨天翌日や曇天が続いた後は撮影日程の調整が必要になることを事前に想定しておく必要があります。
化学物質を扱うプラントや爆発性ガスが発生する区域では、機体に防爆性能が求められる場合があり、当社の標準機材では飛行できない区域があります。危険区域の指定を事前に確認し、飛行の可否と方法を施設の保安担当者と協議することが必須です。
位置づけと限界
ドローン・赤外線によるデータ取得は、あくまで「現況の記録と異常疑い箇所の発見」が主な役割です。屋根防水層の浮きや外壁の剥離について、修繕の要否や工法を確定する判断は、打診棒による直接検査や専門技術者の目視診断を経てはじめて可能になります。
構造体の健全性判定も同様で、ドローンが取得する表面画像・赤外線データは内部の鉄筋腐食やコンクリート中性化を直接評価する手段にはなりえません。「どこに問題の疑いがあるか」を効率的に絞り込む工程に位置づけ、確定診断は専門技術者と連携して進める運用が基本となります。
よくあるご質問
Q. 工場が稼働している日でも飛行できますか?
A. 施設管理者・保安担当者との事前協議と構内安全計画の策定が前提です。稼働時間帯・危険区域の有無・構内交通との調整方法を確認したうえで実施可否を判断します。早朝や休日の限定フライトで対応するケースもあります。
Q. 太陽光パネルの異常は赤外線で全数確認できますか?
A. 赤外線画像によるホットスポット検出は有効な手段ですが、日射量・風速・気温差などの気象条件によって検出精度が変動します。現況データの一次スクリーニングとして活用し、疑い箇所の確定は電気技術者による接触計測と組み合わせる運用を推奨しています。
東海エアサービスの実務での進め方
工業団地・産業施設の点検依頼を受けた場合、最初に施設管理者から保安規程・危険区域区分・構内交通の運用ルールをヒアリングします。その情報をもとに飛行経路と安全管理計画を作成し、担当者の立会い体制を確認したうえでフライト日程を確定します。
撮影は可視と赤外線を同日に実施し、取得した点群・画像をTREND-POINTで処理します。成果物はオルソフォト・赤外線画像・LAS/LAZ形式の点群データ・DXF平面図・PDFレポートの組み合わせで納品します。施設の規模と撮影範囲に応じて地上型レーザースキャナとの併用も検討します。
測量業登録(第(1)-37730号)・全省庁統一資格を保有し、全国対応が可能です。現場ロケハン・撮影・データ処理・納品まで一括して対応します。建設会社・施設管理会社・管理組合など、依頼元の業態に応じて成果物の形式と報告書の粒度を調整します。
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