日本では昭和40〜50年代に大量建設された庁舎・学校・公民館・図書館といった公共施設が、いまや建築後40〜50年を超える時期を迎えています。国の「公共施設等総合管理計画」や「個別施設計画(長寿命化計画)」においては、現況の劣化状態を客観的なデータとして把握し、修繕・更新の優先順位を合理的に判断することが自治体に求められています。しかし多くの施設は外壁が高所にあり、屋根や設備廻りは足場なしでは近接できません。こうした箇所の現況把握にドローン(可視カメラ・赤外線カメラ)と3D計測を組み合わせる手法が、維持保全の現場で選ばれるようになっています。
ドローン・3D計測でできること
可視カメラと赤外線カメラを搭載したドローン、および地上型レーザースキャナを組み合わせることで、以下のような現況データを取得できます。
| 調査対象 | 使用手法 | 主な取得情報 |
|---|---|---|
| 外壁タイル・モルタル | 赤外線カメラ搭載ドローン | 浮き・剥離の疑い箇所を面的に抽出(赤外線画像・熱分布図) |
| 屋根防水・笠木 | 可視カメラ搭載ドローン | ひび割れ・膨れ・排水不良箇所の高解像度記録(オルソ画像・PDF) |
| 高所開口部・設備架台 | 可視カメラ搭載ドローン | 目視困難箇所の現況写真・動画記録 |
| 建物外形・構造物寸法 | 地上型レーザースキャナ/空中写真測量 | 点群データ(LAS/LAZ)・DWG/DXF図面・3Dモデル |
点群処理にはTREND-POINT・TREND-ONEを使用し、取得した3Dデータから平面図・断面図・立面図をDWG/DXF形式で出力することが可能です。既存図面が古い・または存在しない施設では、現況実測図の作成から対応しています。
長寿命化計画での活用方法
長寿命化計画の策定において、ドローン・3D計測データは次の場面で基礎資料として機能します。
劣化箇所の面的把握。赤外線撮影では、外壁全面を漏れなくスキャンした画像上に温度差として浮き疑い箇所が現れます。「どの方位・どの階層に集中しているか」を面的に把握することで、部分的な目視では見逃しやすいパターンを発見しやすくなります。
修繕優先度の根拠資料。撮影日時・気象条件・箇所ごとの熱分布図をPDFにまとめ、修繕計画書の添付資料として活用できます。劣化の広がりを図示することで、予算要求時の説明資料としても使いやすい形式になります。
経年比較の基礎データ。数年ごとに同条件でドローン撮影・点群計測を繰り返すことで、劣化の進行度合いを比較できます。「前回調査からどの箇所がどの程度変化したか」を数値・画像で示せるため、維持保全サイクルの記録として機能します。
計測・運用上の留意点
供用中施設と来庁者の安全確保。庁舎・学校・公民館は平日に利用者がいる場合がほとんどです。飛行経路・高度・作業時間帯を事前に施設管理担当者と調整し、必要に応じて一時的な立入制限区域の設定や誘導員の配置を計画します。
赤外線調査の前提条件と限界。赤外線による外壁浮き調査は、日射が外壁に一定時間当たって表面温度差が生じることを前提とします。方位・季節・時刻・天候によって精度が左右され、北面や日陰の多い面では検出感度が低下することがあります。また、赤外線で検出できるのは「温度差として現れる浮き疑い箇所」であり、確定診断には打診調査や専門家による現地確認が必要です。
法定定期調査との関係。特定建築物(建築基準法第12条)に係る定期調査では、外壁の全面打診等が求められる場合があります。ドローン赤外線調査がこの法定要件を代替できるかどうかは、適用条件・調査方法の承認要件・所管行政機関(特定行政庁)への確認が必要であり、一律に代替できると断言できるものではありません。調査計画の段階で所管との事前協議を行うことを推奨します。
飛行許可・調整。国土交通省への飛行許可申請(DID・高度150m超等)のほか、施設によっては関係機関への事前連絡が必要な場合があります。飛行申請の手続きも含めて調整します。
よくあるご質問
Q. 既存の図面がなく、建物の正確な寸法がわからない状態でも対応できますか?
A. 対応可能です。地上型レーザースキャナやドローン空中写真測量から点群データを取得し、現況の外形・寸法をDWG/DXFで出力します。竣工図が存在しない施設や、増改築で図面と現況が乖離している施設でも、現況実測図の作成から対応しています。
Q. 調査から成果物納品までどれくらいかかりますか?
A. 規模や調査内容によりますが、現地計測完了後、通常5営業日を目安としています。急ぎの場合は3営業日対応も相談可能です(内容・規模によります)。
東海エアサービスの実務での進め方
東海エアサービスは測量業登録(第(1)-37730号)および全省庁統一資格を取得しており、官公庁・自治体案件に対応しています。公共施設の維持保全調査では、以下の流れで進めています。
現地確認・飛行計画立案。施設の配置・周辺環境・利用状況を事前に確認し、飛行ルート・撮影方法・安全管理計画を立案します。外壁面の向き・日照条件を考慮して赤外線撮影の時間帯を決定します。
現地計測。DJI系ドローン(赤外線カメラ搭載機含む)および必要に応じて地上型レーザースキャナを使用します。来庁者動線と飛行エリアを分離し、施設管理者と連携しながら作業を進めます。
データ処理・成果物作成。赤外線画像・オルソ画像・点群データ(LAS/LAZ)を処理し、TREND-POINT・TREND-ONEを用いてDWG/DXF図面・PDF報告書を作成します。浮き疑い箇所は写真・位置図・熱分布図を組み合わせて整理します。
結果説明・次回計測の検討。成果物の読み方を担当者へ説明し、修繕計画や次回定期調査のスケジュール検討をサポートします。データは経年比較の基礎として保管できる形式でお渡しします。愛知・東海エリアを中心に全国対応しており、施設の規模・調査目的に応じた計測プランを個別にご提案しています。
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