二つの現場、二つの判断
昨年、似たような条件の現場が連続で依頼されました。いずれも「山林の土量計測」です。
現場A:茨城県の大型採石場の掘削完了後の形状確認。範囲5ha、納期2週間、予算100万円。
現場B:福島県の林地開発現場の現況測量。範囲3ha、納期4週間、予算140万円。
同じ山林計測なのに、Aは写真測量(フォトグラメトリ)、Bはドローンレーザー(LiDAR)を選びました。その理由と、実際の結果を正直に語ります。
現場Aで写真測量を選んだ理由
採石場は、もともと樹木がほぼ無い環境です。地表面がむき出しになっており、フォトグラメトリが得意な環境そのもの。
DJI Phantom 4 RTKで450枚の画像を取得し、Metashapeで処理。水平±3cm、垂直±5cmの精度を実現でき、費用は見積25万円で済みました。納期も3日。
採石場の施工者は「土量計算が合った」と満足し、次の現場も紹介してくれました。この選択は完全に正解でした。
現場BでLiDARを選んだ理由
一方、福島の林地開発現場は状況が異なりました。
地目は「林地」。杉とアカマツの混合林で、樹高15〜20mの立木が密生しています。開発は「現況のまま測量し、造成計画の基礎資料に」という依頼でした。
ここで写真測量を選んでいたら、どうなったか。フォトグラメトリは樹冠(葉)の表面までしか捉えられません。地表面の正確な地形を知ることができないのです。
対して、LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザーが樹木を貫通して地表面に反射します。植生下の地形を正確に把握できるのです。
結果、我々は Matrice 300 RTK + Zenmuse H30T(LiDARモジュール搭載)を選択。飛行高度120m、スキャン間隔2cm、計3回のフライトで6000万点以上の点群を取得しました。
LiDAR処理の手間と精度
ただし、LiDARの処理は写真測量より複雑です。
単なる「点群」だけでは顧客は利用できません。フィルタリング(ノイズ除去)、地表面の抽出(Ground Classification)、等高線の生成、体積計算──こうした工程を経て初めて「使える成果品」になります。
TREND-POINTを使用して横断図・地形図をDWG形式で出力し、公共工事の電子納品形式に対応させるのに、3日かかりました。
費用は見積60万円。処理費を含めて、計測から納品まで9日間。
価格差と納期の正直な話
「同じ3〜5haの計測なのに、なぜ25万円と60万円でこんなに差が出るのか」と質問される時があります。
答えは明快です:樹木を貫通させるレーザーと、葉の表面を撮影する光学カメラでは、工事の質が全く違うからです。
写真測量は「速い、安い、シンプル」。地表が露出した現場なら最適です。
LiDARは「正確、網羅的、複雑」。植生が濃い現場では、これ以外に選択肢がありません。
現在の判断基準
経験を通じて、我々の選択基準は以下のように確立しました:
写真測量(フォトグラメトリ)を選ぶ場合:
- 樹木率が30%未満、または樹高が5m以下
- 精度要件が±5cm以上でよい
- 予算感が限定的(見積15〜30万円)
- 納期が急ぎ(3日以内)
LiDARに切り替える場合:
- 樹木率30%以上、または樹高5m超の密生林
- 地表面の正確な地形が必要
- 公共工事など成果品品質が厳格
- 多少の費用・納期は容認可能
機材投資と技術の使い分け
LiDAR対応のMatrice 300 RTKは、機材だけで800万円を超えます。ただし、この投資が「現場Bのような案件を確実に受注できる武器」になったことを考えると、決して無駄ではありませんでした。
218件以上の実績を積んだ中で、「この現場には何が必要か」を見極める目利きが磨かれてきたのだと感じます。