濃尾平野は木曽三川が形成した沖積平野であり、尾張・三河沿岸部を中心に海抜ゼロメートル地帯が広く分布します。戦後の地下水過剰採取による広域地盤沈下は法規制によって沈下速度が低下したものの、造成地や盛土、構造物周辺では局所的な沈下が発生しやすい地形的・地質的背景があります。こうした地域での盛土管理や施設維持に携わる担当者から、「面的に地盤の高さ変化を把握したい」「どのエリアで沈下傾向が強いかを定期的に確認したい」という相談が寄せられることが多くあります。ドローン測量はその一つの手段として機能しうりますが、用途と限界を正確に理解したうえで活用することが重要です。
ドローン測量でできること
RTK/PPK対応ドローンによる空撮点群取得と地上型レーザースキャナを組み合わせることで、広範囲の標高データを面的に取得できます。定期的に同一エリアを計測し、取得した点群データを比較することで、地盤の高さ変化の傾向を面的に把握することが主な用途となります。
| できること | 補足 |
|---|---|
| 広域の標高・地盤高の取得 | 数十ha〜数百haを一度に計測可能 |
| 定期計測による経時差分の算出 | 前回計測との高さ差を面的に比較 |
| 沈下・隆起傾向のエリア把握 | 変化量が大きい箇所の絞り込み |
| 盛土・構造物周辺の面的確認 | 特定構造物周辺の変状傾向を把握 |
| 成果物の多形式納品 | LAS/LAZ・標高データ・差分図・DWG/DXF・PDF |
なお、ドローン点群による計測精度は使用基準点の配置・気象条件・地表面の性状によって左右されます。センチメートル〜数センチメートルオーダーの高さ変化の傾向把握には活用できますが、ミリ単位の精密沈下量を確定する目的では水準測量やGNSS連続観測が必要であり、用途を混同しないことが前提となります。
沈下モニタリングでの使い方
地盤沈下モニタリングにドローン測量を活用する場合、最も重要なのは計測条件の一貫性の確保です。初回計測時に設置した基準点(既知点または新設した固定基準点)を以降の計測でも同一座標系で使用し続けることで、計測間の比較が意味のあるデータとなります。
差分処理を行うことで、沈下量が大きいエリアと変化が小さいエリアを色分けした差分図として出力できます。これにより、広域の中から要注意箇所を絞り込むスクリーニングとして機能します。絞り込んだ箇所については、現地確認や精密計測の優先度判断に活用できます。
計測頻度は対象地の変状リスクや管理要件によって異なりますが、半期〜年1回の定期計測を組み合わせるケースが多くあります。成果物はTREND-POINTで処理したLAS/LAZ形式の点群データ、標高差分図(PDF・DWG/DXF)として納品します。
濃尾平野・沿岸部の地盤的背景
濃尾平野は木曽川・長良川・揖斐川の複合扇状地・三角州として形成された厚い沖積層が広がる地域であり、軟弱な粘性土・砂質土が地表から数十メートルに及ぶ地点も珍しくありません。昭和期に深刻化した地盤沈下は法規制と地下水管理の強化によって沈下速度は低下したものの、低平地の多い名古屋市南部・海部地域・木曽川沿岸部では依然として地盤変動のモニタリングが欠かせない地域特性があります。
海抜ゼロメートル地帯では排水機能の維持や堤防・護岸の管理において地盤高の変化が直結した問題となります。こうした地域での面的な標高把握ニーズは、従来の水準点による線的モニタリングを補完する形でドローン計測が活用される場面が増えています。
計測の留意点と限界
ドローン点群による地盤沈下モニタリングには、技術的な前提条件と明確な適用限界があります。
基準点・座標系の固定が前提:異なる計測回の点群を比較するためには、同一の基準点を使用し同一の座標系で整合させる必要があります。基準点自体が沈下していないかの確認も必要であり、信頼性の高い既知点(三角点・水準点等)との接続が推奨されます。
ミリ単位の精密沈下計測は別手法が必要:ドローン点群はセンチメートルオーダーの標高変化の傾向把握には有効ですが、精密な沈下量の確定測定(ミリメートルオーダー)が必要な場合は水準測量やGNSS連続観測が適しています。ドローン計測はあくまでスクリーニングや広域傾向把握として位置づけます。
原因究明・対策判断は地盤専門家が担当:点群データから得られるのは「どのエリアで高さが変化しているか」という地形的事実であり、沈下の原因(地下水変動・荷重・液状化・土質等)の究明や対策工法の判断はボーリング調査や地盤専門家による解析が不可欠です。ドローン測量はあくまで面的な状況把握の手段であり、地盤診断の手段ではありません。
よくあるご質問
Q. 計測の間隔はどのくらいが適切ですか?
A. 対象地の変状リスク・管理要件・予算によって異なります。初回計測から半年後・1年後という形で比較計測を行い、変化量の傾向を確認してから以降の頻度を検討するケースが多いです。急速な沈下が懸念される箇所では、より短い間隔での計測を検討することもあります。現地状況をお聞きしたうえで適切な計画をご提案します。
Q. 建物の下や樹木が密集した箇所の地盤高は取得できますか?
A. ドローン空撮のみでは建物直下・樹冠下の地盤面の点群取得は困難です。地上型レーザースキャナとの組み合わせや、計測可能な範囲での部分取得になる場合があります。対象エリアの地表面の状況を事前にお知らせいただくことで、適切な計測方法をご提案できます。
東海エアサービスの実務での進め方
東海エアサービスでは、濃尾平野・東海エリアを中心に全国対応で地盤モニタリング目的のドローン点群計測を実施しています。測量業登録(第(1)-37730号)および全省庁統一資格を保有しており、公共工事・官民双方の案件に対応可能です。
使用機材はDJI系RTK/PPK対応ドローンおよび地上型レーザースキャナです。点群処理はTREND-POINT・TREND-ONEで行い、LAS/LAZ形式の点群データ、標高差分図(PDF)、DWG/DXF形式での納品に対応しています。初回相談では対象エリアの概要(範囲・現状の管理体制・モニタリングの目的)をお聞きし、現地計測後おおむね5営業日での成果物納品を基本スケジュールとしています。定期計測の場合は初回計測時の基準点情報を保管し、以降の計測との連続性を担保する体制をとっています。
計測のご相談はお気軽に。関連記事はドローン測量の記事一覧に。
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