建物の外壁タイルやモルタルの剥離・浮きを調べる「外壁調査」は、特定建築物の定期調査報告において重要な項目のひとつです。従来の足場を組んでの全面打診に加え、近年は赤外線ドローンによる調査が選択肢として普及しています。それぞれに得意な条件と限界があるため、建物の形状・用途・周辺環境・求められる精度に応じた適切な方法の選択が求められます。
赤外線ドローン調査と足場打診の比較
| 項目 | 赤外線ドローン調査 | 足場全面打診調査 |
|---|---|---|
| 足場の要否 | 原則不要 | 必要(仮設足場またはゴンドラ) |
| 接触・非接触 | 非接触(離れた位置から撮影) | 接触(打診棒で直接叩いて確認) |
| 工期 | 撮影自体は短期間で完了しやすい | 建物規模・仮設工程に比例して長期化 |
| 第三者への影響 | 落下物リスクが低く、通行止め不要なケースが多い | 足場設置で歩道封鎖・駐車場使用制限が生じやすい |
| 適用条件 | 日射・壁面温度差・天候・壁面方位の条件あり | 壁面に物理的にアクセスできれば適用可 |
| 記録性 | 熱画像・オルソ・PDF報告書・DXFで面的記録が残る | 打診結果は図面マーキングや写真が主体 |
赤外線調査の適用条件と限界
赤外線調査は、壁面内部の剥離・浮き箇所が太陽熱を蓄積または放出する際に生じる温度差を赤外線カメラで捉える手法です。原理上、日射や壁面と外気の温度差が十分に確保されていることが前提となります。
調査精度に影響する主な要因
- 日射・温度差の確保:曇天・雨天・強風時は壁面の温度変化が乏しく、浮き箇所の検出が困難になります。調査可能な気象条件の範囲は建物や設備により異なるため、当日の天候確認は必須です。
- 壁面方位と撮影タイミング:南面・東面・西面では日射の当たる時間帯が異なります。適切な撮影時間帯を外れると温度差が生じにくく、判定精度が低下します。北面は特に注意が必要な条件です。
- 含水・外装材の種類:含水した外壁材は熱の挙動が変わり、誤判定の要因になることがあります。また、外装材の熱伝導率・表面反射率によっても撮影結果は変わります。
- 検出できる浮きの深さ:ごく浅い位置の剥離は検出しやすい一方、深層部の浮きや微細なクラックは赤外線では把握しにくい場合があります。
なお、赤外線ドローン調査が定期調査報告における「全面打診等」の代替手段として認められるかどうかは、建物の条件・特定行政庁の運用・適用する調査基準によります。実施前に対象建物の要件と所管行政庁への確認が必要です。
使い分けと併用の考え方
赤外線ドローンと足場打診は対立する選択肢ではなく、組み合わせることで調査の質とコスト効率を両立できるケースがあります。
一次スクリーニング+局所打診の流れ
まず赤外線ドローンで建物全面を撮影し、熱画像上で浮き・剥離の疑いがある箇所を面的に把握します。その後、疑いのある部位に限定して足場やロープアクセスによる打診を実施することで、全面足場の必要範囲を絞り込めます。特に大規模建物や供用中の商業施設・マンションなど、足場設置コストや第三者影響を抑えたい案件で相談が多い進め方です。
一方、壁面形状が複雑・低層で全面打診のコストが小さい・赤外線の気象条件が得られにくい北向き壁面中心の建物などでは、打診調査を主体とするほうが適している場合もあります。
現場でよくある相談
- 「ドローンだけで定期調査の報告書が完成しますか?」:赤外線ドローン調査の結果が定期調査報告書に使用できるかは、特定行政庁の運用と建物条件によります。事前に所管窓口へ確認いただいたうえで調査計画を立てるようお伝えしています。
- 「供用中の建物で足場が組めません。赤外線だけで対応できますか?」:供用中で通行人・入居者への影響を抑えたい案件は赤外線ドローンの相談が増えています。ただし壁面方位・外装材・季節によって適用可否が変わるため、現地状況の確認から始めます。
- 「熱画像で浮きと判定されたら、必ず補修が必要ですか?」:赤外線画像はあくまで浮き・剥離の疑い箇所を絞り込む手段です。補修要否や優先順位の判断は、打診や目視との照合を経て、建築士等の専門家が行います。調査結果の解釈についても報告書内で整理してお渡しします。
東海エアサービスの実務での進め方
- 建物情報の事前確認:壁面方位・外装材の種類・建物用途・調査目的(定期調査報告/自主点検)・過去の補修履歴を受領し、赤外線調査の適用可否と撮影計画を検討します。
- 現地ロケハン(必要に応じて):隣接建物との離隔・電線・壁面形状・日影の影響を確認します。撮影できない面がある場合は事前にお伝えします。
- 撮影・解析・成果物の納品:DJI系ドローンに赤外線カメラを搭載し、熱画像と可視光画像を同時取得します。成果物は赤外線画像・オルソ画像・浮き箇所を図面上に落とし込んだDXF・PDF報告書です。
- 見積時の確認項目:建物の延べ壁面積・階数・敷地状況(飛行可能エリアの確認)・調査目的(定期調査報告の代替か自主点検か)・成果物の仕様(DXF出力の有無など)を確認します。
- 資格・登録:測量業登録 第(1)-37730号/全省庁統一資格取得済み。全国対応。
赤外線ドローン外壁・設備調査
非接触で外壁の浮き・剥離を一次スクリーニング
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