ドローン測量や3Dレーザースキャンで取得したデータには、施設の構造や設備の配置情報が精密な形で記録されます。こうした計測データには、発注者が意識していない形で機密情報が含まれていることがあり、取り扱いや保管の方法を事前に確認しておくことが重要です。外注先の測量会社がどのようなセキュリティ体制を持っているかは、発注判断の重要な要素のひとつです。
計測データに含まれる主な機密情報
ドローン空撮や地上型レーザースキャナで取得したデータには、現場の状況が高精度に記録されます。工場やエネルギー施設、インフラ設備など、立ち入りが制限されている場所の計測を依頼する場合は、以下のような情報が含まれる点を念頭に置いてください。
| 情報の種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 設備・機器の配置 | タンク・配管・電気設備・生産ラインの位置と寸法 |
| 施設の構造 | 建屋の形状・階数・出入口・防護設備の位置関係 |
| 製品・在庫情報 | 屋外ヤードの原材料・製品の積載状況・在庫量の推定 |
| 位置情報・測地情報 | RTK/PPKによる精密な絶対座標(緯度・経度・標高) |
| インフラ情報 | 送電線・通信設備・水道施設の詳細な配置 |
点群データやオルソ画像はそのまま目的外利用が可能な形式であり、データそのものを「成果物と同等の機密」として扱う必要があります。
取り扱い・保管の考え方
計測データのセキュリティは、業務開始前の合意事項として整理しておくことが基本です。
秘密保持契約(NDA)の締結:撮影・計測の実施前に、秘密保持契約を書面で締結します。契約には「対象データの範囲」「利用目的の限定」「第三者提供の禁止」「契約終了後の廃棄義務」を明記することが一般的です。口頭確認だけで進める会社には注意が必要です。
撮影範囲・取得項目の事前合意:「どこを・何のために・どの範囲まで」計測するかを飛行前に書面で確認します。必要以上の範囲を撮影しないこと、隣接する他社敷地や居住エリアが写り込まないよう飛行経路を設計することが求められます。東海エアサービスでは、ロケハン時に撮影範囲を図面で確認し、発注者の承認を得てから飛行計画を作成しています。
アクセス制限と保管管理:取得したデータにアクセスできる人員を最小化することが重要です。現場担当者・処理担当者・納品担当者のそれぞれに必要最小限のアクセス権限を設定し、社内の共有ドライブ等への無制限展開は避けます。保存媒体の暗号化やパスワード管理も基本的な対策です。
保管期間と廃棄:成果物の納品後、元データをいつまで保持するか・どのタイミングで廃棄するかを契約に明記します。「納品後一定期間で廃棄」あるいは「発注者の指示があり次第廃棄」といった形で、廃棄方法(物理的な削除・上書き消去など)を確認することが望ましいです。
再委託先の管理:点群処理や図面化を外注する場合、再委託先にも同等の秘密保持義務を課しているかを確認します。元請け会社がNDAを締結していても、処理作業を別会社に流している場合、その会社の管理水準が問われます。
データ受け渡しの留意点
成果物の受け渡し方法も、セキュリティ上の重要な確認事項です。
USBメモリや光学メディアによる持ち回りは紛失リスクがあります。受け渡しにはパスワード付きの限定共有リンクや、送受信履歴が残るファイル転送サービスを使う方が管理しやすくなります。メール添付による大容量データ送信は、経由サーバーでのデータ残存リスクがあるため、重要度の高いデータには適しません。
また、受け取ったデータを「誰が開封できるか」を発注者側でも管理する必要があります。納品データをそのまま社内共有フォルダに置くと、閲覧権限のない社員がアクセスできる状態になりかねません。データの形式(LAS/LAZ・GeoTIFF・DXFなど)によっては専用ソフトが必要なため、受け取れる環境を事前に確認しておくことも重要です。
発注者が事前に確認すべきポイント
測量・計測会社に依頼する前に、以下の点を確認することを推奨します。
- 秘密保持契約(NDA)の締結に対応しているか
- データの保管期間と廃棄方法を書面で説明できるか
- 点群処理・図面化などの後工程を再委託している場合、その会社にも秘密保持義務を課しているか
- 社内でデータにアクセスできる人員を限定する運用をしているか
- 取得情報の守秘体制について説明を求められるか
測量業登録を持つ会社は、業務上取得した情報の守秘義務が法令上も求められています。登録の有無は、委託先を選ぶ際の最低限の確認事項といえます。
よくあるご質問
- 工場内の詳細な設備配置が写り込むことが心配です。撮影範囲を制限できますか?
- 撮影範囲・飛行高度・カメラ角度はロケハン時に事前に調整します。計測に必要な範囲のみを対象とし、余剰な範囲を含めない飛行計画を立案することが可能です。撮影前に範囲を図面で確認し、発注者の承認を得てから作業を開始しています。
- 成果物の納品後、元の計測データはどうなりますか?
- 保管期間と廃棄のタイミングは契約時に取り決めます。「納品後に全データを廃棄する」「一定期間保持した上で廃棄する」など、発注者の要件に合わせた対応が可能です。廃棄方法についても契約書に明記します。
東海エアサービスの実務での進め方
東海エアサービスでは、工場・インフラ施設・重要施設を対象とした計測案件において、以下の手順でセキュリティ管理を進めています。
初回打ち合わせの段階で、秘密保持契約の締結を標準的な手続きとして位置付けています。発注者から特別な要望がなくても、NDA締結を前提に作業準備を開始します。測量業登録(第(1)-37730号)および全省庁統一資格を保有しており、官公庁・自治体案件での秘密保持義務にも対応しています。
飛行前にはロケハンを実施し、撮影範囲・立入禁止エリア・写り込みの可能性がある隣接施設を発注者と共に確認します。DJI系RTK/PPKドローンによる空撮データ、および地上型レーザースキャナによる点群データは、用途に応じてアクセス権限を絞った形で管理します。
点群処理や図面化を含む後工程が発生する場合は、処理担当者に対しても守秘義務を課した上で作業を進めます。成果物の納品形式(LAS・LAZ・GeoTIFF・DXFなど)は受け渡し前に発注者と合意し、取り扱い方法の案内も合わせて提供しています。全国対応のため、遠隔地案件でもデータの受け渡しは安全な手段を選択して進めています。
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