高い場所にある橋梁の主桁、傾斜した擁壁面、建物の高層外壁など、地上からの目視や足場設置では十分に確認できないコンクリート部位のひび割れ・変状把握は、維持管理上の大きな課題です。ドローンによる近接撮影と赤外線調査は、そうした部位への接近手段として実務で使われるようになっています。ただし、両手法には適した用途と明確な限界があり、使いどころを理解して組み合わせることが重要です。
2つの手法でできること
高解像度近接撮影によるひび割れ・変状の把握
ドローンに搭載した高解像度カメラを構造物に近づけて撮影することで、地上からは確認困難な部位の表面状態を画像として記録できます。橋梁の桁下面・橋脚側面・擁壁上部など、足場なしでは接近が難しいエリアも対象になります。撮影画像は静止画だけでなく、複数枚からオルソモザイク(平面展開画像)を作成し、ひび割れの位置・走向・延長を図面上で整理することもできます。ただし、画像から読み取れるひび割れの幅は、飛行距離・カメラ解像度・光量条件に依存するため、撮影時の設定が結果を大きく左右します。
赤外線調査による浮き・剥離の把握
赤外線(サーモグラフィ)カメラは、コンクリート表面の温度分布を把握します。健全部と浮き・剥離部では蓄熱・放熱の違いが生じるため、温度差として現れた箇所を変状候補として抽出することができます。特に仕上げ材の浮きや、打音では届きにくい広い面の一次スクリーニングに向いています。
| 手法 | 得意な対象 | 苦手・難しい対象 |
|---|---|---|
| 高解像度近接撮影 | 表面のひび割れ位置・走向・延長の記録、変状の分布把握 | 微細なひび割れの幅絶対値計測、内部の欠陥 |
| 赤外線調査 | 仕上げ材・コンクリート表層付近の浮き・剥離候補の面的把握 | 深部の欠陥、日射・気温条件が整わない状況での判定 |
検出の限界
ひび割れ幅の絶対計測は撮影条件に依存する
ドローン撮影画像からひび割れ幅を計測しようとする場合、得られる数値は飛行高度・カメラの画素数・レンズ特性・光の当たり方に強く依存します。現場条件によって同一のひび割れでも見え方が変わるため、撮影画像から導かれる幅は「目安」として扱う必要があり、法定の点検基準が要求する計測精度を満たすかどうかは個別に判断が必要です。
赤外線は日射・温度差が前提で浅部中心
赤外線調査は、太陽光による加熱と放熱のプロセスで温度差を生じさせる仕組みのため、日射条件・気温・風速・測定タイミングが結果に影響します。曇天・夜間・直射が当たらない北面などでは温度差が出にくく、判定精度が下がります。また温度差として現れる変状は表層付近の浮き・剥離が中心で、内部深部の空洞・欠陥の把握は難しいとされています。
微細ひび割れ・内部欠陥の把握には限界がある
表面に現れていない内部のひび割れ・空洞や、幅が非常に小さい微細ひび割れは、撮影画像や赤外線のみでは確認できないケースがあります。こうした欠陥の把握には、コアサンプリングや超音波・打音などの非破壊検査が別途必要になります。
人による点検との役割分担
ドローン近接撮影と赤外線調査は、広い面積や高所を短時間でカバーし、変状候補を記録・整理する「一次スクリーニング」として位置づけるのが実務上の正確な理解です。スクリーニングで変状候補として抽出された箇所に対して、人が近接して行う打音検査や接触計測・クラックスケールによる計測を組み合わせることで、変状の性状や緊急性の判断精度が上がります。
法定点検(道路橋定期点検など)では、近接目視の実施が求められる場面があります。ドローン画像がその近接目視要件を満たすかどうかは、発注機関・点検要領の解釈によるため、設計段階で発注者との確認が必要です。スクリーニングとしての活用と、法定要件の充足は分けて整理することが重要です。
- 一次スクリーニング:ドローン近接撮影・赤外線で変状候補箇所を絞り込む
- 詳細確認:打音・近接目視・接触計測で変状の性状・深さ・幅を確認する
- 記録・報告:撮影画像・温度分布図・計測値を統合して報告書に整理する
現場でよくある相談
- 「擁壁の全面を写真で記録したいが、斜面で近づけない」という相談では、ドローンによる近接撮影でまず全面の画像を取得し、変状が集中している範囲を絞り込んでから詳細調査の計画を立てるアプローチを提案しています。
- 「外壁タイルの浮きがどの範囲に広がっているかを把握したい」というケースでは、赤外線調査で面的なスクリーニングを行い、温度差が現れた範囲を記録した上で、打音による確認範囲を限定する組み合わせが相談として多くあります。
- 「橋梁の桁下面のひび割れを記録したいが、川の上で足場が組めない」という場合には、ドローンを桁下面に近づけて真上向きに撮影し、画像とひび割れ展開図を作成する対応について問い合わせを受けることがあります。
東海エアサービスの実務での進め方
- 事前確認:構造物の種別(橋梁・擁壁・建物・法枠)、対象面の向き・高さ・周辺障害物、法定点検の要件有無、発注者が求める成果物の形式を確認してから飛行計画を立てます。
- 飛行・計測:DJI系高解像度機・赤外線搭載機を使用し、対象部位に応じて飛行距離・撮影角度を調整して近接撮影を実施します。赤外線は日射条件が整う時間帯を選んで計測します。
- データ処理:撮影画像からオルソモザイク・展開図を作成し、変状箇所を図面上に位置付けて整理します。点群データが必要な場合はTREND-POINT・TREND-ONEで処理し、DXF出力にも対応しています。
- 成果物:画像・オルソ・変状分布図・PDF報告書を標準納品物としています。発注要件に応じてDXF形式の変状図も作成します。
- 見積時に確認していること:対象構造物の延長・面積、アクセス可否(道路占用・河川区域・飛行禁止エリアの有無)、成果物の形式と精度要件、法定点検対応か自主点検かの区分。測量業登録 第(1)-37730号・全省庁統一資格のもと、全国対応。
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