橋梁の定期点検(5年ごと)にドローンを活用する方法|近接目視の代替

道路橋は5年に1度の定期点検が求められており、桁下や支承部など地上からのアクセスが困難な箇所の点検に多くのコストと時間がかかります。近年、ドローン(UAV)や赤外線カメラ、3D計測技術を活用した「点検支援技術」の導入事例が増えており、点検員の安全確保や作業効率の改善に寄与しています。本記事では、橋梁定期点検においてこれらの技術がどのように活用されるか、および運用上の留意点を整理します。

ドローン点検でできること

橋梁点検でドローンが特に有効なのは、足場や高所作業車を用いなければ目視が困難な箇所へのアクセスです。桁下面・主桁側面・支承付近・橋台背面など、従来は大規模な仮設設備を要した場所を空撮できます。また赤外線カメラを搭載することで、コンクリートの剥離・空洞・ひび割れに伴う温度差を面的に把握できます。さらに写真測量(フォトグラメトリ)や3Dスキャンとの併用により、橋梁全体の形状モデルと変状位置を記録として残せます。

活用技術主な対象箇所得られる成果物
可視光カメラ(UAV空撮)桁下面・主桁・高欄・橋脚高解像度写真・変状写真記録(PDF)
赤外線カメラ(UAV搭載)コンクリート床版・桁側面熱画像・浮き/空洞の面的分布図
フォトグラメトリ・3Dスキャン橋梁全体・損傷箇所周辺点群データLAS/LAZ)・DWG/DXF形状図

近接目視との関係:補完・支援としての位置づけ

道路橋の定期点検は、国の点検要領において近接目視を基本とする点検方法が定められています。現時点では、ドローンによる空撮・赤外線計測が法定の近接目視を完全に代替できるとは整理されていません。あくまで「点検支援技術」として、近接目視の補完・事前調査・記録補強に活用されるものです。

実務上は、ドローンによる事前空撮で全体の変状分布を把握したうえで、足場設置が必要な箇所を絞り込むという使い方が多くあります。全体を足場で覆う場合と比較して、仮設規模の縮小や作業日数の短縮につながるケースがあります。点検結果の判定および記録については、要領に基づいて点検員が最終確認を行う必要がある点に留意してください。

運用上の留意点

橋梁でのドローン点検は、通常の上空飛行と異なる制約があります。主な留意点を以下に示します。

  • GNSS(GPS)信号の遮蔽:桁下・橋台内部など構造物に囲まれた空間では測位精度が著しく低下する。ビジョンポジショニングや手動操作への切り替え、あるいは地上型レーザースキャナとの併用を検討する必要がある。
  • 第三者被害防止と交通規制:河川上・道路上空での飛行は、関係機関や道路管理者への飛行許可申請、および必要に応じた交通規制の協議が必要になる。近隣・通行者への落下リスク評価も欠かせない。
  • 天候・風速管理:橋梁周辺は川沿いで風が強くなりやすい。機体ごとの最大風速制限を確認し、突風リスクのある天候では飛行を中止する判断基準を事前に決めておく。
  • 航空法・規制空域の確認:橋梁付近が空港周辺の管制空域や飛行禁止区域に該当する場合、事前の許可取得手続きが必要になる。

現場でよくある相談

  • 「足場を組むと橋下の通行や河川管理の調整が大変。ドローンで代替できないか」という相談が多くあります。近接目視の要件を確認したうえで、ドローンで事前に全体を把握し足場範囲を最小化するプランを提案しています。
  • 「コンクリート橋面の剥離状況を広範囲で把握したいが、歩いて叩き点検では時間がかかりすぎる」という声があります。赤外線空撮で温度分布を面的に記録し、詳細確認が必要な箇所を絞り込む流れが有効なケースがあります。
  • 「点検写真を管理台帳と紐づけて記録したい。ドローン写真をそのまま使えるか」という質問も多くあります。撮影計画段階で橋梁ごとの識別情報・撮影方向・点検ロケーションを設計しておくことで、成果物PDFと座標位置の紐づけが可能になります。

東海エアサービスの実務での進め方

東海エアサービス(測量業登録 第(1)-37730号・全省庁統一資格)では、橋梁点検支援の依頼に対して以下のステップで対応しています。

  • 事前ロケハン・規制確認:橋梁の構造形式・橋長・橋下環境を確認し、GNSS受信状況・飛行許可の要否・道路管理者との調整要否を整理する。
  • 飛行計画・機材選定:DJI系RTK/PPK対応機に赤外線カメラを搭載するか、フォトグラメトリ用可視光カメラのみとするかを点検目的に合わせて選定する。桁下など構造物に囲まれる箇所は地上型レーザースキャナを併用する場合がある。
  • 計測・処理:空撮後はTREND-POINTで点群処理を行い、LAS/LAZ・DXF形状図・変状写真記録PDFを成果物として納品する。
  • QC・納品:成果物は担当者による確認(QC)を経て納品。点検要領に基づく最終判定は発注者側の点検員が行うことを前提に資料を整備する。
  • 見積時の確認項目:橋梁の規模(橋長・幅員・支間数)、点検箇所の優先範囲、成果物フォーマットの指定(点群・図面・写真整理の別)、飛行許可申請の要否、現地立ち会い者の有無。全国対応が可能で、現地計測後の成果物納品は通常5営業日を目安としている。

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