飲料・醸造工場では、屋外の貯蔵タンクや原材料ヤードに大量の在庫が常時保管されています。タンクの充填量、ヤードに積み上げられた麦芽・穀物・砂糖などの体積を正確に把握することは、原価管理・棚卸し精度・仕入れ計画に直結します。しかし、大型タンクの外形計測や広大なヤードの測量を従来の方法(目視・検尺・重量換算)だけで行うには限界があります。ドローン写真測量や地上型レーザースキャナを組み合わせることで、こうした設備や原材料ヤードの三次元形状と体積を短期間で計測できます。
ドローン・3D計測でできること
飲料・醸造工場の敷地内では、目的に応じて計測手法を選択します。主な適用範囲を以下にまとめます。
| 計測対象 | 手法 | 主な成果物 |
|---|---|---|
| 屋外貯蔵タンク・サイロ外形 | 地上型レーザースキャナ | 外形3Dモデル・DWG/DXF断面図・LAS/LAZデータ |
| 原材料ヤード(穀物・麦芽・砂糖など山積み) | DJI系RTKドローン写真測量 | 点群データ・体積計算表・差分レポート |
| 建屋・構造物の現況 | 地上型レーザースキャナ・ドローン | 平面図・立面図・3Dモデル(DWG/PDF) |
| 敷地全体の地形・動線 | PPKドローン航空写真測量 | オルソ画像・数値地形モデル |
タンクやサイロの外形計測では、地上型レーザースキャナにより胴体の変形・傾き・腐食による形状変化も点群データとして記録できます。設備の現況図として保管しておけば、次回点検時の比較基準にもなります。原材料ヤードの体積計測は、ドローンによる航空写真測量で三次元点群を生成し、TREND-POINTで設計基盤面(地盤面)と現況との差分体積を算出する手順が中心になります。
飲料・醸造工場固有の留意点
飲料・醸造工場は食品製造施設であり、一般的な土木・建設現場と異なる配慮が必要になります。
衛生区域への機材持ち込み:製造ラインや発酵室など衛生区域にスキャナやドローン機材を持ち込む場合は、工場の衛生管理規程を事前に確認する必要があります。機材の洗浄・梱包の可否、入室前後の手順について、施設担当者と事前に取り決めておくことが前提となります。屋外タンク・ヤードの計測を主目的とする場合、衛生区域への立ち入りを最小化する計画を組みます。
穀物・粉体の粉塵環境:麦芽・小麦・砂糖などの粉体を扱うヤードでは、風が強い日に粉塵が舞いやすくなります。ドローンのプロペラ気流が粉塵を巻き上げると機体センサーや光学系への付着リスクがあります。計測当日の風況・作業状況を事前に確認し、必要に応じて作業時間帯を調整します。
体積から質量換算の注意点:点群計測で得られるのは「体積」であり、在庫の「質量(重量)」に換算するには嵩密度(かさ密度)が必要になります。穀物・麦芽の嵩密度は含水率・品種・積み上げ状態によって変動するため、計測側が嵩密度を決定することはしません。体積計算値の提供にとどめ、質量換算はお客様側で管理している嵩密度を用いて行っていただく運用が適切です。
稼働中の安全管理:稼働中の工場敷地内でドローンを飛行させる際は、工場構内のフォークリフトやタンクローリーの動線と干渉しないよう、飛行エリアと時間帯を工場側と事前調整します。地上型スキャナも機材の設置位置が動線を塞がないよう配置を計画します。
在庫管理への活用
定期的に計測を繰り返すことで、ヤード在庫の増減を数値として記録できます。棚卸し時点の体積と仕入れ・払い出しの記録を突き合わせることで、ロスや計量誤差の傾向をつかむ手掛かりになります。
例えば四半期ごとにドローン計測を実施し、前回計測との差分体積レポートを蓄積していくと、季節変動や受払いサイクルとの相関を分析しやすくなります。計測結果はLAS/LAZ形式の点群データとともに、体積計算表をPDF等の表形式で納品するため、既存の在庫管理帳票と組み合わせやすくなります。
よくあるご質問
Q. タンクの内部容量も計測できますか?
A. 地上型レーザースキャナや航空写真測量で計測できるのは外形形状が中心です。タンク内部の充填量を直接計測する用途(レベル計・検尺)とは目的が異なります。外形3Dモデルから設計寸法との差異確認や、外部からの変形チェックには対応できます。内部計測が必要な場合は、タンクの開口部形状や安全規程を確認したうえで個別に相談を受け付けています。
Q. 原材料ヤードの計測は、山積みの形状が不規則でも対応できますか?
A. ドローン写真測量と点群処理の組み合わせは、コーン状・不整形いずれの積み上げにも対応しています。基盤面の設定方法(設計地盤か実測地盤か)によって体積値が変わるため、計測前にお客様と基準面の定義を確認します。急勾配の山積みは点群の死角が生じやすいため、飛行ルートの設計段階で対策を組み込みます。
東海エアサービスの実務での進め方
飲料・醸造工場の計測案件では、以下の手順で進めています。
1. 事前ヒアリング:計測目的(棚卸し・設備台帳更新・定期モニタリング)、対象範囲(タンク基数・ヤード面積)、成果物の活用先(経理・生産管理・設備管理)を確認します。衛生管理規程や構内作業許可の手続きについても、この段階で情報をいただきます。
2. ロケハン・計画:現地または地図・航空写真の情報をもとに、タンク配置・ヤード地形・飛行障害物(建屋・排気塔)を確認し、飛行ルートとスキャナ設置位置を設計します。ドローンの場合はDJI系RTK機を使用し、地上基準点を設置して位置精度を確保します。
3. 計測・処理:ドローン写真測量またはレーザースキャンを実施し、TREND-POINT・TREND-ONEで点群データを処理します。体積算出は設計面・現況面の差分演算で行い、LAS/LAZ・DWG/DXF・体積計算表(PDF)の形で成果をまとめます。
4. 納品・説明:成果物一式を納品後、必要に応じて数値の読み方や次回計測時の比較方法を説明します。定期計測の場合は計測間隔と比較レポートの様式をお客様と決めて運用に組み込みます。東海エアサービスは測量業登録(第(1)-37730号)・全省庁統一資格を取得しており、名古屋を拠点に全国対応しています。
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