盛土造成地や擁壁・法面は、大規模盛土造成地の変動防止に関する法整備が進むなか、定期的な変位モニタリングへの関心が高まっています。従来は定点の杭や傾斜計など計器による点的な計測が中心でしたが、ドローンと点群データを活用することで、斜面全体を面的に把握し、変状の発生箇所や広がりを早期に捉えることが可能になりました。本記事では、盛土・擁壁・法面の変位モニタリングの進め方と、現場での留意点を整理します。
点群による面的な変位把握とは
ドローン写真測量や地上型レーザースキャナで取得した点群データを複数時期で比較することで、表面の標高値の差分(点群差分)を面全体にわたって算出できます。「法面全体のうちどのエリアで沈下・膨出が起きているか」「変状がどの方向に広がっているか」を色分け表示で把握しやすい点が、計器計測との大きな違いです。
一方で、点群差分は傾向把握を目的とするものであり、高精度な精密変位量の連続記録を要する箇所では、引き続き計器計測との組み合わせが現場の標準的な考え方です。
| 計測手法 | 強み | 限界・補完が必要な場面 |
|---|---|---|
| 点群差分(ドローン/レーザー) | 面全体の変状分布を把握できる/航空撮影で斜面の立ち入り不要 | 連続自動記録には不向き/植生・落葉等の影響を受ける |
| 傾斜計・沈下計などの計器 | 特定点でのリアルタイム・連続計測が可能 | 設置点以外の面的な変状を把握しにくい |
| 組み合わせ運用 | 面的傾向と定点精密データを補完し合える | コスト・管理体制の整備が前提 |
計測・運用の留意点
点群差分でモニタリングを継続するには、比較する複数時期のデータに一貫性を保つことが前提です。現場での主な留意点は以下のとおりです。
- 基準点の固定:変位が生じていない安定地盤上に基準点を設け、毎回の計測で同一の座標系に合わせます。基準点そのものが動いていると差分値が無意味になるため、設置位置と固定方法は計測前に確認します。
- 同条件での反復計測:飛行高度・重複率・計測時間帯を可能な限りそろえ、点群の密度と品質を均一に保ちます。季節による太陽角度の違いも影響するため、記録として残しておくことが重要です。
- 植生・表面性状の影響:雑草や落葉が茂っている時期は、地表面そのものの点群が取得しにくくなります。植生除去後の計測や、植生貫通性の高い地上型レーザースキャナとの併用を検討することがあります。
- 精度の限界を明示する:点群差分はモニタリング上の傾向把握として位置づけます。「変化なし」の判断には一定の計測誤差範囲を考慮し、軽微な数値変動を過信しないことが実務上の基本方針です。
定期モニタリングの運用フロー
モニタリングは「計測して終わり」ではなく、継続的な差分管理と記録の蓄積が本質です。一般的な運用の流れを示します。
- 初回計測(ベースライン取得):基準点設置・座標確認のうえ、現況の点群を取得して初期状態を記録します。
- 定期計測(頻度は現場条件による):降雨・地震などのイベント後、または一定の時間間隔で反復計測します。計測頻度は斜面規模・リスク状況・維持管理計画に応じて設定します。
- 差分・報告:前回取得点群との差分を色分けマップで整理し、変状が疑われる箇所の位置と規模を確認します。成果物はLAS/LAZ形式の点群データ、DWG/DXF形式の平面図・断面図、PDFレポートとして納品します。
- 記録の蓄積と目安管理:計測ごとの差分値と記録を時系列で保管し、あらかじめ設定した変化量の目安を超えた場合には、詳細調査や補修計画の検討につなぎます。
現場でよくある相談
- 「どのくらいの頻度で計測すればよいか」:斜面のリスク評価や管理計画によって異なります。まず初回計測でベースラインを確定させ、その結果を踏まえて次回以降のスケジュールを決めるケースが多いです。
- 「既存の測量成果や図面と比較できるか」:過去の測量成果(座標系が明確なもの)があれば、今回の点群と重ね合わせて差分を確認できます。ただし座標系や計測条件が異なる場合は再整理が必要になります。
- 「植生が多い法面でも計測できるか」:植生の状況によっては地表面の取得精度が下がるため、計測時期の調整や地上型レーザースキャナとの組み合わせを提案することがあります。事前のロケハンで判断します。
東海エアサービスの実務での進め方
当社では、DJI系RTK/PPK対応ドローンと地上型レーザースキャナの両方を用途に応じて使い分け、TREND-POINTによる点群処理・差分を自社で対応しています(測量業 登録第(1)-37730号、全省庁統一資格)。
- 初回ロケハン:現地状況(斜面規模・アクセス・植生・基準点設置候補)を確認し、最適な計測手段と体制を判断します。
- 基準点設置・初回ベースライン取得:安定地盤上に基準点を固定し、初期状態の点群を取得・整理します。
- 差分・成果物納品:LAS/LAZ・DWG/DXF・PDFで納品。複数時期の差分を色分けマップと断面図で整理します。
- 継続計測対応:同一基準点・同一フローで反復計測に対応します。過去計測データとの比較管理も継続して実施します。
- 見積にあたって確認している主な項目:対象斜面の面積・高低差・形状/既存測量成果や設計図書の有無と座標系/現地へのアクセス条件(進入路・ドローン飛行可否・植生状況)/モニタリングの目的(維持管理計画・報告先・成果物形式の要件)/計測頻度・継続期間の想定。東海エリアを中心に全国対応。
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